第6話 下校
「くっそ〜。もうちょっとで勝てたのにー」
体育も終わり、もう下校時間になりそうな時も瑞波は未だに項垂れていた。
「まだ言ってんのかぁ? もう下校時間だぞ?」
「だってよぉ。本当にあと少しだったのに」
「再戦は次の機会だな」
「次っていつだよ。バスケがあるか分かんないし、そもそも次も敵チームとは限らないだろ」
俺は帰りの支度をしながら会話をする。
「そんなに言うなら、また今度、慶太と裕司を誘ってやるか?」
「まじか!? 良いぜ! 次は全員ぶっ倒してやる!」
瑞波は急に元気になった。
「うーし。じゃあ帰るかぁ」
今日はみんなやることがあるので別々に帰ることになった。靴を履いて帰ろうとすると、校門前に見覚えのある人物が立っていた。
「……」
「…ねぇ、少し時間良いかな?」
「…はぁ」
話しかけられた。しぶしぶ振り向くとそこには元カノの桃華の姿があった。
「なんだよ。もう俺たちは別れたろ?」
「別に少し話すくらい良いじゃないか」
「はぁ。で、話って?」
俺はこいつにはいい思い出があんまりないので早々に切り上げて家でまったりしたい。
「その前に少し歩こうよ」
「嫌だよ。早く話してくれ」
「せっかちだなぁ。まぁいいか」
「僕も流石に自分にも悪いところがあると思って後で反省したんだ」
「ふーん。……え? なんの話?」
本当にそれだけの為に呼んだのか? 俺は本当にこんなどうでも良い話を聞かされる為に止められたの?
「話は最後まで聞きなよ。……それでこれからは僕も君の前では控えるから、また付き合わない?」
「え? 嫌だけど?」
俺は即答で答えた。もう後悔も未練もない。それにもうあんな苦しい思いはしたくないから当分恋はしなくて良いと思ってる。
「…理由を聞いても良いかな?」
「だって俺、もう別にお前のこと好きじゃないし、お前もそうだったんだろ?」
「僕はちゃんと君のことも好きだったよ。ただ僕は他の女の子も好きだっただけさ」
だからと言って目の前であんなことをされたら俺から苦痛でしかない。俺は内心呆れていた。
「じゃあ、そのままで良いんじゃね? もう俺には関係ないから」
俺はそのまま桃華の横を通りすぎた。もう面倒くなったので俺はそのまま帰ろうとする。
「じゃあな。できれば俺に話しかけてくるのはやめてくれ」
「……」
「ただいまー」
「おかえりー」
家に入るとリビングで妹がくつろいでいた。テレビを見ながらソファでだらーっとしている。
「最近早いね。桃華さんと何かあったの?」
「言ってなかったか? 俺もう別れたよ」
「え? なんで!? お兄あんなに付き合えて嬉しそうにしてたのに!」
「まぁ、色々あったんだよ」
「色々って何!?」
凄ぇぐいぐいと来る。なんとしても聞きたいって妹の顔に書いてあった。
「後で教えるよ」
「本当? じゃあまた部屋に行くからね!」
「はいはい」
俺は部屋に戻って晩御飯ができるまで眠ることにする。今日は体育で疲れたし、帰りの時にも余計な体力を使ってしまった。
「まぁ、母さんか美代が起こしてくれるだろ」
そうして俺は目を閉じてゆっくりと眠った。
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