第53話 凱旋の宴
大きい方が小さい方の尻尾に噛み付き、小さい方は火が天を仰いだ。その喉元めがけて騎士団の矢が放たれたが、わずかに刺さっただけで、首を振ると抜けてしまった。
その間にも冒険者は
「こっちだぞ、仲間で
とか怒鳴り、慣れてきた者は尻尾にまたがって遊んでいた。
二匹の戦いは続き、ついに大きいほうが尻尾に小さいのを噛み付かせたまま走ろうとしたが、人間に押さえつけられた。
そのまま、二匹は
「おめえなんかこうしてくれる」「くずれ、また来いやーー」「おまえ、とことん間抜けだな・・・・噛み付きっぱなしたぁ」とか言われながら、討伐されたのだった。
後日、ギルドマスターが調べるとうろこが歯にひっかかって、抜けなくなっていたと判明した。
にぎやかに騒ぎながら、騎士団も冒険者も入り乱れて町に戻った。
広場に労をねぎらう食事と酒の用意がされていた。
「勇敢な君たちの活躍で魔獣を退治することができた。君たちの活躍にポーションが助けになったことは理解していると思う。だが、君たちの勇気は君たちのものだ。大いに誇ろうではないか。明日の朝、君たちは元に戻っている。力も跳躍も普段のままだ。だが名誉は残る・・・・・グラスは行き渡ったかな・・・・・乾杯」
ギルドマスターの挨拶で宴が始まった。ライトは片隅で串の肉を頬張りながら、いまだに目を見開いたままの男たちが、肉を頬張りエールを飲む様子を観察していた。
肉はそれなりになくなったが、エールはかなり残った。広場には打ち捨てられた男たちが横たわっていた。
ライトは記録を読み直し、補足しながら男たちが一人、また一人と倒れていくのを見ていた。
最後の一人が倒れるのを確認して時間を書き込むと書類をまとめた。
「ほんとに酔いが早いな」とその口が動いた。
合図をすると男がやってきた。書類を渡すと受け取り、すぐに去って行った。
エールと肉を片付けさせると、ティーナが作った二日酔いドリンクをテーブルに並べさせた。
それから、自室に引き上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます