第43話 ジルフォードの言い訳 ジルフォード目線

「その青雷花草せいらいかそうはいつ、色を変えるかわからないので、一瞬も無駄にせず駆けつける必要があるので、ティーナを家族に預けて出かけました。


母も使用人も俺の妻を大事にすると思いこんでました。で、俺はその時公爵で結婚は王命で行われました」と言うと


「なるほど、ジルあなたはティーナを害する者などいないと思ったってこと?」とサリーさんが言うと


「でも、もの凄い嫁いびりが・・・」とポーラさんが付け加えた。


「大抵の男は自分の母親が嫁いびりをするって思わないって聞いた」とティーナが言うと


「「そうよ。ほんとに男は馬鹿だから」」とご婦人二人が声を揃えて言った。


「いい、あなたのお母様のやった事は嫁いびりの範疇を超えてるわ。へたすればティーナは死んじゃったかも知れないのよ」


「ほんと、髪をつかんで引きずり回したいわよね」


「ほんとに。焼けたフライパンを押し付けてもいいぐらい。それくらい酷い行為よ」


「お母様にはたっぷり反省してもらったほうがいいわね」


「はい、それはもう・・・・」あの町のおばさんもこの二人も言うことがあまり変わらない。不変の真理なのだろうか。


「それとご姉妹はどうなったの?」とパトリシアとスーザンのことを聞かれたので


「嫁ぎ先が連れ帰りました」と答えた。


「だんなさん次第ね・・・・わたしの聞いた話でいちばんすかっとしたのは、離婚して下女に落として自分は若い美人と再婚したことかな」とサリーさんが言うと


「それ、聞いた。手元に置いとくほうが責任持てるとか・・・でもこれって再婚した女性がいびりたいから家に置いといたって言ったとか言わなかったとか」とポーラさんが続けた。


「あの・・・俺・・わたしはちゃんと・・・」と必死で二人の話に割り込んだ。


「ちゃんと?」とうながされた。


「ちゃんと厳しくするように言いました」やっと言えた。そして


「俺は近くの町でなにか買っては家に送りました。手紙もたくさん送りました」と必死で続けた。


「確かにジルは悪くないわね」とサリーさんが言ったので、ほっとして俺はティーナのほうを見た。


「あの時のお土産はないけど、今回のお土産が・・・・・ティーナ・・・受け取って欲しい」と俺はバッグから包みを出した。


ティーナが包みを開けると



「あら素敵ね。それは自分で選んだの?」とポーラさんに聞かれて


「いえ、まわりのご婦人の助けを借りて・・・・」と答えた。


「なるほどね」とポーラさんが優しく言ったので


「はい、妻に送るというとみなが親切にいろいろ教えてくれました」と言った。


「もしかしてたくさんあるの?」


「はい、どれもティーナに似合いそうで・・・・・そして一度に渡したらいけないってお店の人が」と俺が言うと二人はうなづいた。



「なるほど・・・・そしてティーナがいないとわかってすぐに追いかけなかったのは、どうして」とサリーさんが咎めるように言った。


「公爵家の処置をある程度つける必要がありました。公爵家というより、家族ですね。けじめの為にわたし自身の手で・・・・」と答えた。


「今、公爵家はどうなってるの?」とサリーが言うので


「なくなりました。わたしも家名がありません。・・・・えっとヘンリーだけです。王太子は好きな家名をつけろと言ってます」


「王太子とか公爵とか・・・・小説みたい」とポーラさんが急に話題を変えた。


「ほんとに現実離れしてる人たちだけど、嫁いびりはするのね」とサリーさんが続けた。半分ため息をついている。



夜会で女性たちを相手にするより、大変だ。思えば夜会ではあのご婦人たちは手加減していたのだな・・・


それが手加減なしで、ティーナに嫁いびりをしたんだ。辛い思いをさせたんだ。






「ティーナ、毎日ここに来ていいだろうか?」


ティーナは二人をちらっと見て、俺の方をみてうなづいた。



「さぁお立ちなさい。足大丈夫」の声に俺は少し尻を浮かした。そのまま動けなかった。


じっと耐える俺をみて、三人はちょっと笑った。



「ティーナ、結婚の記念になにか揃いの物を贈りたいのだが・・・・」


「あら、いいわね。腕輪とか指輪?ピアスもいいわね」


「三人でよく考えるから、ジルは今日お帰りなさい」


「え?」帰れと言うのか?容赦ないな!


俺は、よろよろと立ち上がると、三人に挨拶して店を出た。


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