第36話 公爵家は終わった 王太子目線
そろそろレッド一族を終わりにしよう。ほんとはこのまま見ないで、燃やしたいけど、それは無責任だ。
王太子としてきちんとしなくては。
隊長たちと冒険者のリーダーを集めて計画を話した。
それから、心配ですぐに見舞いたいという貴族を全員連れてレッド邸に乗り込んだ。とっても臭い。やっぱり燃やせばよかった。だが、連中に向かって呼びかけた。
「やっと、入ることができた。大変だったであろう。心配で早く会いたいと思う者が多くてな、断りきれずに全員で来た」と大声で告げると薄汚れて、油染みた男女がわらわらと集まって来た。
「我々は騙されたのです。王命のことなど存じませんでした」と言うものがいるが、誰だ?
「貴族の誇りを捨てたのか?騙されたと口にするなど恥と思わぬのか」と気持ちよく言い放つと
「あの格好は」「汚いですね」「使用人はどうしたのでしょう」「変装の可能性は?」「あーーなるほど」
とか見物人がすき放題に感想を言っている。
「王命か、王命でも結婚をないがしろにした輩も存在したが相応な罰は与えた。王位の簒奪、謀反を問題としておる」
「簒奪ですって?恐ろしい」「一族で?」「一族処刑で」「このような人たちが公爵を名乗っていたとは」見物人は自由でいいですなぁ。
そうだ、無責任なうわさを広めてくれ。そのために連れてきた見物人だ。
「王命はジルフォードとその夫人を結婚させるものだ。ジルフォードは忠実に夫人を娶った。公爵夫人と言う地位をないがしろにする者はいないとわたしは信じておったが・・・・」
「ジルフォード様の結婚も王命でしたの?」「そちら様も王命ですの?」「はい、いい伴侶を得られました」と見物人がまわりに話している。いいぞーー
あそこも王命で結婚させたな。俺の派閥から嫁を送り込んだが、うまく行ってるようだ。
「夫人は辛い境遇をジルに心配をかけてはいけないと、一人で耐えておられた。このわたしもジルとともに出張っていたからな・・・・・まさか王命による結婚を蔑ろにする貴族がいたとは・・・・そしてやったことが卑しい。家族がそんなことをしたと広まるのはジルとて辛いと思って内密にしておったが、ジルの心の整理がついたのでここで話す。ジルの夫人のお金を盗っていたのだ。夫人は先ほども言ったが苦労された。だが、ドレスの請求書をこいつらは送ったのだ。『マダム・ボーテメルバ』のドレス三枚だ。あきれてしまう。しかもその請求書は水増しされておった。メルバは既に罰をあたえておる。鉱山に送ろうかと思ったが、ドレスを作らせるほうが、そのほうたち令夫人、令嬢が喜ぶかと思いわたしの直轄で働かせるよう手配しておる。可愛がって欲しい」
控えめな拍手が、ご婦人たちの間に起きた。わたしが微笑みを送ると会釈が返って来た。
「相手は取るに足りない平民だぞ。貴族に奉仕できることを喜ぶべきです」ここでこの発言とは
「今、話したお前は誰だ?」
ヒゲだらけの男の顔は区別がつかん
「王宮で話したではないか」
「おぉお前か、ジルの叔父だな」
「情勢を読んで俺はここに立ち、お前はそこに這いつくばる」と嘲笑ってやった。
「そうだな、平民は貴族に奉仕するものだ」とその叔父に向かって言うと満足そうに笑った。その言葉おまえに返すのだぞ。おまえは笑われるほうだ。
そこに冒険者が三人、サンドイッチを乗せた盆を持って入って来た。
さすがの俺も驚くことが起きた。
俺を睨みつけていたレッド達が皿に群がったのだ。
「うわっ」「あっ」「・・・・だめだ・・」冒険者は必死で立っていた。
「寄越しなさい」「どけ、俺のだ」「わーーー」「いやよ」「痛い」「無礼な」
もう充分だと見物の貴族は外にだした。
たっぷりうわさを振りまいてくれるだろう。正義の側に身を置いているものは容赦ないからな。
騒ぎが収まった時、呆然とした冒険者と割れた皿が残り、食べ物を手にしたレッドたちはどこかに消えていった。
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