第35話 エリクサーの材料 王太子目線
今から一年前、俺が保護したいと思っている薬師になぜかジルが一目惚れしたので、二人を王命で結婚させた。
ジルが本気で口説けば彼女はイチコロだったと思うが、ジルは即効で結婚したがり最速、最善の策は王命だと主張し譲らなかった。それで俺は親友の為に権力を使った。ついでにいくつかの家門同士を王命で結びつけた。これでいろいろやりやすくなった。
結婚して安心したのかジルはなんだかポヨンとしていた。これから全力で口説くらしい。うらやましい・・・いやほとほと呆れた。
そういうときに、早馬で知らせが来た。
エリクサーの材料の青雷花草の群生地が見つかったと言うのだ。それを聞いたときジルの野郎「げっ」と言った。
ジルは彼女、ティーナの事を家族に頼んですぐに出発すると決断した。
俺も王命で結婚させてよかったと思った。そうでなければジルのやつ、遠征をしなかったと思う。公爵家に預ければ安心だし、ほんとあの判断はよかったと思っていたのだ。・・・・おめでたくも、まだ甘かったんだ、俺って・・・
ぐたぐた、だったが、俺たちは使者が乗って来た馬が、厩舎に収まる前には、出発していた。目指すはノーステラ帝国の南端だ。ツーチャンのところだな、どこの領土かなんてどうでも良い。一刻を争うのだ。
そしてその青雷花草のなかで、なぜか色を変えて白くなる花があるらしい、それがエリクサーの材料だ。
全速力で駆けつけたが、すでにリバリア王国のやつらが陣を組んで誰も寄せ付けないようにしている。ポールのところだな・・・
ジルは馬から飛び降りると駆け出した。最初の敵の横を通りすぎる時、剣を抜いて振った。
そのまま一直線に敵将の前に飛び出すと剣を振った。兵たちはジルの後を懸命に追って行く。
「このまま引け、無駄に死ぬな」とジルが言うと敵が二・三歩下がり、それから反対を向くと去って行った。
「半数はこのあたりを片付けろ。残りは花を見張れ。なにを探すかわかっているか?」と問いかけると
「はい。白い花です」と答えがあった。
「よし」と俺が答えた。
細かい見張りの順番は、俺が侍従と相談して決める。ジルのやつ手紙を書いている。キスとかしてやがる・・・・
花を一緒に贈るのか・・・・普通に枯れるだろ・・・枯れ草もらってうれしいか?・・・もしかして薬師はうれしいのか?まさかだよな?!
それからしばらくは、やって来る他国軍を退ける日々だ。そんなに忙しいのにジルは近くの町まで馬を飛ばしてなにか買っては奥様に贈っているようだ。
こんな小さな町ゆえ、王都で買うような宝石やなんかはないが、ジルが「妻への贈り物を探してる」と言うと、おばちゃんの売り子が親切に選んでやってるようだ。
一応俺たちは他国の敵兵なんだが・・・
ジルが贈り物を買う時、ジルはもちろん周りも幸せそうだ。結婚って言うやつは・・・・
落ち着いたらここを占領しに来るかな・・・ツーチャンが我慢すればいいんだし・・・・いや、平和が一番だ。
そして白い花を確保して戻ってみたらティーナがいなくなっていたのだ。
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