第9話 客間にて 2 ジルフォード目線

俺は水を一口飲むと続けた。


「彼女のお金が公爵家に入るように工作されました。その書類には公爵家の印章が押されていました」


「「・・・・・・」」二人は息を飲んだようでなにも言えなかった。



「彼女の手元にはほんのわずかなお金しかはいらなくなり、食事も事欠く生活になったようです。というか満足に食べられない生活になりました。


その上、この請求書が彼女に送られました」とマダム・ボーテメルバの請求書を二人に見せました。


「それは・・・・お母様が作って下さるって」とフォグ夫人が言いだし


「そうです、二人に呼び出されて・・・」とマーレナ夫人も言った。


「二人ってなによ。あいつに請求書を送るって言ったら賛成したでしょ」とフォグ夫人が言うと


「そりゃ、あいつは奴隷でしょ」とマーレナ夫人が言うと


「スーザン!王命で決まった公爵夫人だぞ、おまえは」とマーレナ伯爵が怒鳴った。


「この請求書の宛名は家名が、入ってないがわざとなのか?」とフォグ侯爵が静かに言った。


ほう、口にしたか知らんぷりすると思ったが・・・・


「当たり前でしょ、恥ずかしくて公爵夫人だと言えないもの」とフォグ夫人が言うと


「そうよ。平民なんて払わせて貰えるだけ名誉でしょ。あの女、のりのりで多めに請求したはずよ」とマーレナ夫人が言った。


あわてて前公爵夫人がマーレナ伯爵夫人の口をふさいだが、おそかった。



「レッド公爵閣下、夫人を連れて帰ります。閣下にご迷惑のないよう責任を持ちます。離縁は致しません。罪は償わせます」とマーレナ伯爵は俺に頭を下げた。


「レッド公爵閣下、わたくしも夫人を連れて戻ります。わたくしも離縁をせず責任を取りますし、必ず本人に罪を償わせます」とフォグ侯爵も頭を下げた。


「ありがとう・・・・あっ金はいらない。金の問題ではない。印章の事もこの公爵家の問題だから・・・・しばらく忙しくなるが、そのうちに・・・・」


「かしこまりました」


「かしこまりました。義兄上。いえ、フォグ侯爵殿、先に馬車に乗って下さい。わたくしは後で行きます」


「いや、そちらが先に・・・・夫人が辛そうだ」


「ありがとうございます」


そういうとマーレナ伯爵は夫人を助けて部屋を出た。


伯爵はわざとドアを開けっ放しにした。すぐ夫人の声が聞こえた。


「あなた、怖かったわ。あの女のせいで・・・・でもよかったあなたがわかってくれて」


伯爵は答えなかった。二人は遠ざかって行った。



はっとフォグ夫人は頭を上げて侯爵を見た。希望の光が目に浮かんでいる。


しばらくすると二人は出て行った。




「母上、後は公爵家の問題だけですね」


「母と呼んでくれるの?」


「面倒なんでそう呼ぶだけです。まぁこの家の問題は明日にしましょう。明日朝食の後で話しましょう」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る