第10話 義兄弟の話し合い

フォグ侯爵が王都の屋敷に帰り着いた時、思った通りマーレナ伯爵からの手紙が届いていた。


公爵家を出てすぐに出したということだ。さすがだと思った。すぐに返事を返した。


妻のパトリシアを召使用の部屋に閉じ込めるように指示をだした。侍女は着替えをさせおえたら、ひとりずつ部屋で謹慎するように言いつけた。


軽食を用意させて部屋で伯爵を待った。


ほどなく部屋に案内された伯爵とよく相談した。


「お邪魔します。侯爵閣下」


「あぁよく来てくれた・・・・さすがだな、手紙が届いていてそう思った。わたしの手紙を読んでそう思ってくれたなら嬉しい」


「・・・はい」


「答えにくいよな。だが、我々は同志だ。同じ船に乗っている。同じ考えができる同志だ」と侯爵が言うと


「遠慮なく言わせていただければ・・・・仲間で良かったと」とマーレナ伯爵は言った。


「妻とは離縁する。妻が公爵夫人から泥棒したものは返す」とフォグ侯爵が言うと


伯爵はうなづいた。


「泥棒した物は返す。持参金も返す。配偶者をどう扱う?伯爵の所は恋愛結婚だね」


「愛は冷めます。帰り際の言葉で氷点下です」とマーレナ伯爵は言った。


侯爵は同情をこめてうなづいた。


「これはわたくしの方から先に申し上げます。離縁はしません。うちが責任を持って・・・・罰します」とマーレナ伯爵が言うと


「同じだ。公爵夫人の収入を掠め取った罪だ。迷惑をかけた慰謝料も払うつもりだ」とフォグ侯爵も言った。


「えぇ、前公爵夫人をどう扱うかを見てそれにそう形で・・・・罰するつもりです」とマーレナ伯爵が言った。


「王命で結婚してまで守ると言うのはどんな方でしょうか?」と問いかけられて


「深入りはまずいが・・・・知っておきたい」と侯爵も返した。


「わたしはすぐ領地に戻り最近領地に来た女性を捜すつもりです」


「そうだね。わたしもそうしよう。だが、見つけても知らんふりで・・・見つけるのはあくまで公爵閣下だ」と侯爵が言うと


「そうですね、義兄上、いえ侯爵閣下」


「いや、義兄上でいい・・・・ほんとに馬鹿な事をしてくれた」と侯爵が悲しげに言った。


「・・・・・・」


「うちでは妻を粗末な部屋で謹慎させて質素な食事で過ごさせるつもりだ」


「同様にします」とマーレナ伯爵が言った。



二人は別れた後、お互いがいてよかったと思った。


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