最終話 あたしがいないと冒険もできないなんて。ざっこ

 あたしの役目は、教会を潰すこと。勇者のスキキライをなくしてあげることだ。


 その二つを達成した今、もう冒険に付き合う必要もない。


「さあ、行きなさい。ピッキー。あなたは英雄よ。あたしがいたら、あなたは甘えちゃうわ」


「デリン、キミは、ついていかないのか?」


「あたしは、役目を終えたわ。あたしがいなくても、あなたは戦えるでしょ?」


「ムリだ。キミも連れて行く。一人になんか、したくない」


「ほんとにざっこ。あたしがいないと、剣も握れないの?」


 できるだけ嫌われるように、あたしは悪女ムーブを行う。


「おまえさー。そうやってわざと嫌われようとしてんの、バレバレなんだよなー」


 しかし、マレリーはあたしの作戦を見抜いていた。


「そうですぞ。離れ離れになりたくないと、顔に書いておりますぞよ」


「てえてえ! てえてえは正義!」


 ユリー二世と、ハッサンまで。


「どうしてよ? あたしはもう、役立たずよ? 魔王との戦いで、あなたたちをサポートできるわけないわよ?」


「だからって、オイラたちは仲間だろ? 一緒に魔王を打ち倒したら、お前にも恩恵が与えられるんだぞ」


「恩恵なんて、あなたたちだけで受ければいいじゃない」


 あたしは、首を振る。

 旅に同行しても、あたしにやれることはない。


「オイラ、デリンのおいしいゴハンが食べたいぞ。魔王を倒したら、めちゃごちそうしてもらおうと思っていたのによー」


「そうだぞ。デリン。みんな、キミが必要なんだ。キミは私が、この勇者ピッキーが守るから、心配しないで」


 みんな……。


「もう、みんな揃ってザコザコなんだから! あとで足手まといだって追い払っても、しがみついてやるんだから!」


「それでこそ、ピッキーだよ!」

 

 結局、あたしは魔王の城まで同行した。


 いよいよ、魔王と対決する。


 だが、拍子抜けするくらい、魔王は弱かった。


 あの四天王とかいうやつが、やはり最強だったみたい。


「待ってくれ! もう人間を襲ったりはしない。俺は、命令されていたんだ!」


「あなたを動かしていた黒幕を、白状しなさい」


「教会だよ!」


……ピッキーの目から、光が完全に消えた。


 ああ、もう。どうなっても知らないからね。教会、覚悟していなさい。




 

 魔王を証人として、あたしたちは王城へ帰国した。


 証言を魔王から聞いて、国王は困った顔になる。

 

「騙されてはなりませんぞ、国王! この者共は、四天王をそそのかして教会を潰したんですぞ!」


 教会のトップである司祭が、言い訳をした。

 

「いやあ。余罪がありすぎて、おめえを信用できねえ」


 うわ。国王の信頼までなかったのね、教会って。


 教会の悪事を、常々国に報告していた甲斐があったわ。


「バカな! 魔王を倒せば証拠隠滅できて、さらなる収益が見込めたのに!」


 言い逃れできないと判断した司祭が、本性を現す。


「司祭さま」


「なんじゃ? 役立たずの勇者がぉう!」


 ピッキーが司祭に、無言の腹パンを食らわせた。


 司祭が悶絶して、白目をむく。


 倒れた司祭を、兵隊が連れて行った。


「すまんな、勇者よ。お見苦しいところをお見せした」


 国王が、勇者に頭を下げる。

 

「いえ。こちらこそ」


「褒美を取らせる。宴の準備を!」


 こうして、あたしたち勇者一向は、魔王を討伐したことで本物の英雄となった。

 

 のだが……。


「ゼ、ゼリー」


 勇者が、デザートのコーヒーゼリーの前に頭を抱えている。


「私は、寒天系が苦手なんだ。すっかり忘れていた」


 はあー?


「まだスキキライがあったの? ホントに勇者って、ザッコ」


(おわり)

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転生メスガキ、苦手な食べ物を克服させるだけで勇者を最強に育てる! 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

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