正常とは一部の異端である

「それはこっちのセリフ!」


「なに?最近どこかで会ったの?」とハルさんがマオに訊くと「会ったも何も、先日に洞窟で一夜を過ごした人」と何恥ずかしげもなく応える。


「そのときはお世話になりました」と何の意図もなくマオが伝えると「やったのか?」と平静を装っていた技術者は訊き、スグは「そんな体力はなかった」と淀みなく応えるものだから二人とも「……そっか」と先までの下世話な話をしていた人間とは思えない反応をして縮こまる。


「それよりも、元気そうで何よりだテラス。あとで、あのバカに容態を聞こうと思っていたが、直接確認できてホッとしたよ」とバカ素直に彼女を讃美する。


「そんな簡単に落ちるわけないでしょ」と内容こそは違うものの、欲しかった想いは与えられたことにマオは嬉しそうだ。


 話を投げ掛けていた二人は己のやったもとに反省の色をだしつつも、「どうだった?モブさんからの頼み事は?」と気になっている点としてアルベは話を展開。


「面倒な話にだったよ。個人で調べないといけないことが増えた」


「何の話?」と素朴な疑問をぶつけるマオ。


「ああ、流地領の女にハメられて、一回だけ付き合う羽目になって、その依頼で気になる情報を得たんだ」


「それで?」と追加で訊いてくるマオ。何だっか表情が怖い。


 そんなことは気にせずに「それで、とある情報提供者から気になる人間の話を訊いてその女との関係は解消したが、個人で調べないといけないくなった」とサラッと答えた。


「それてつまり、やり捨てたってこと?」


「悪くいえばそうかもしれないが、大体そうだ」と質問に悪びれる様子もなく応えた瞬間、彼女は目の前の男の胸もとを掴んで「最低!!」と怒りの表情と発言が飛び出した。


「え⁉」と流石のスグも驚いて、何に怒っているのか分からず戸惑う。


「突き合って!一回って、どういう神経してんのよ!!無神経な男だと思ってたけどまさかここまでとは!!」

「はい?」

「もし子供とかできていたらどうするの⁉」

「ん?」


 何か盛大な勘違いをしているようだ。


 そこにツッコミを入れる形で「ハハハッハ」と二人は賑やかに笑って、その反応にさらに業を煮やしたのか「笑い事じゃない!生命への冒涜よ!!」と切羽詰まった顔をして訴えるマオ。


「ごめん、ごめん、故郷の郷とさっきの言い方じゃ勘違いもするよね。アハハ」

「二人とも悪気がなくて言ってることは分かるけよ。だけど、識ってる側としては滑稽な絵面なんだよな。ハハハ」

「「どういうこと?」」


 立場が逆転したかのような状況にひとしきり笑い終えたハルさんが答えた。


「カルタルじゃ、付き合うって、突き合うと同意語だけど、世間では一緒に何かやったり、一時的に協力する意味がなのよ。あとスグ、口の悪さのせいで変に勘違いさせたことを反省しなさい。いくら相手の価値観を知らなかったとはいえ、その言い方は語弊を招くからやめてね」と注意された。


 二人は回路が繋がるのに数秒かかりながらも理解した瞬間に、スグは「なるほど」とすっきりした顔をして、マオはごめんなさい」と顔を赤くして、慌てて持ち上げていた手を放す。


「仕方ないよな。知らないってこともそうだが、価値観の違いって奴はすり合わせるたびにすれ違うものだ。特に男女だとよくあること、そんなに気にするなよ」とフォローを入れて場を収めた。


「あのさ、さっきカルタル出身とか言っていたが、事実か?」

「それはまあ――そうだね。はい」


「そうか、だったら少し案内を頼めるか?さっき言った調べものに関係する話なんだ」と、まだ混乱している隙にマオに頼みごとをして、「分かった」と言質を取り、次の予定が決まった。


 次回はそこでの観測になるだろうなと、わたしたちも察しつつも、現世とは違う価値観があるその地域に興味の気持ちを移すのであった。

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