旅立つ前の小話

 異世界に出かける前に、ふと、わたしは現世に戻る時の時間のことを思い出して、質問するように「そういえば、驚きましたよ。起きたら三日間も経っていて。偉そうにしおりに挟むようにって言って、とんでもないところに挟まれたよ」と、わたしが文句を言った。


 ジュジュも同意して「初めて現世に戻ったときビックリしたよね。うちなんて一週間後の公園に放り出されていて、恐る恐る家に帰ったら『いつの間に出かけておったんじゃ』ってじいちゃんに驚かれて、笑ってごまかしたけど、あの時は焦ったわ」と経験を語る。


「じいちゃんって酒屋の?」

「そう、両親は離婚して両方とも育てるのがイヤって言われて、父方のじいちゃんに引き取られた。中学の時のうちはグレたね」

「そうなんですか」


 わたしが近所の姉のことを思い出している中、不躾にミザは「話を戻すが、それは飛び込むところを間違えたのと、一度キュヲラリアに帰還しなかったからだ」と何故そうなったかの結論を吐いた。


「飛び込むところは理解できるんだけど、なんでここに戻ってくる必要があるの?」

「そりゃあ、現世の身体との同期をしていないんだ。いきなり肉体に戻って動かそうとしても動かねえし、状況次第では何日も同期が終わらずに浦島状態になる場合もだってある」

「へえ~そうなんだ。じゃあ、うちは公園で一週間その状態であったと」

「そこに関してはフェニーと同タイプで良かったな。かなり手間だったとは思うが、同期が済むまで神隠ししてもらってたはずだ。戻ったら感謝してけよ」


「は~い」とジュジュはお惚けながら手を上げて返事する。


「ミザも……キュヲも似たようなことをしたわけ?」とわたしが質問すると、キュヲは「する必要がない。それに頑張れば、てめえは直接戻っても同期させれる能力はある。これが空間を扱うタイプの利点であり、欠点だ」と同じマザー出身の意見を聞き、「そういうものか」とジュジュよりかはマシな状態かと情報を受け入れた。


「それじゃあ、わたし達は行くね」


「ああ、いってらっしゃい」とミザことキュヲは小さく三秒ほど手を振り、自分の仕事を始める。


 わたしは先に扉の向こうに入り、白い空間が晴れるのを待つ。


 そして、後追いをするはずのジュジュはこちらを見て「なるほどね、あんたも来るのか、通りでコハル以外の意見も反映されてるわけだ。よろしくね。星なき夜の傍観者くん」と不敵な笑みを浮かべて、扉の先へと進む。


 ――果たして今度はどんな世界が広がっているか楽しみだ。

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