第21話 お前はホントはなんだったんだ??

 大鎌を振るった大魔王ナポレオーレ。カエル人間の冬夜は切り刻まれ血飛沫となって飛び散った。ブラッディドール、デコイ、分身だ!!


 分身に気づかず勝ち誇るナポレオーレに後ろから本物の冬夜が渾身の異世界魔法精霊術を放つ!!


「精気砲ッッ!!」


 少女剣士キティにも使った一撃必殺の魔法。精気を粒子に変えて相手に叩き込む!! その波動は視認できない。相手は届いてるのかすら分からない。


 しかし精気砲を喰らうと反作用で喰らった相手は精気を一定時間失う。精神力を失うのだ。戦意喪失をさせて尋問する。それが冬夜の計画だった。……のだが。


 フゥ。風がそよいだかの様だ。冷たい風だ。


 精気砲を喰らったナポレオーレはそよ風にたなびくように一瞬で灰になり緩やかな風に飛ばされて行った。夏の風だ。


 これには冬夜とティーナ。そしてナポレオーレの嫁一団が目を丸くさせた。一番驚いたのはカエルのモンスター冬夜だ。


「なんじゃこりゃ!!!! おい!! 帰ってこい!! 色々聞きたい事があるんだよ!! 四大魔王と七魔王がどこで繋がってるとか!!

 本物の魔王城はどこにあるかとか!! 吐かせないと行けないことが!! ああああ!!!! 俺のバカァ!!」


 武器屋の屋根の上。冬夜は瓦を叩きながら悔しがる。ティーナ。


「つくづく下品なおじさんでしたね。面白いわあ。」


 瓦を叩く冬夜の後ろで冷ややかな視線をナポレオーレのいた方に向けるティーナ。


 そこにナポレオーレの嫁の一段が駆け寄って来る。みんな涙を浮かべて喜び安堵の表情を浮かべる。冬夜は顔を見せないように厳しい顔をした。


 一人の裸の女性が冬夜に話しかける。


「あ、あの。か、カエルさん??」


 冬夜はぶっきらぼうに返事する。


「ん?」


「あ、ありがとうございます。なんとお礼を言って良いのか。」


 冬夜は無表情に返事する。


「ん? お礼は要らんぞ。俺は何もやっとらん。」


 これにはティーナも冬夜に文句を言おうと近づこうとするが冬夜はティーナに左手で制止して合図する。女性は自分達の気持ちが落ち着かないらしく冬夜に詰め寄る。


「で、ですが! それでは私達の気持ちが。」


 冬夜は右手で女性達のセリフを制止して話す。


「お前等? これで助かったと思ってるのか?」


 女性陣はあっけに取られた顔でヘッ?という。冬夜は続ける。


「お前等は大魔王の嫁になる契約をしたんだ。それは死ぬまで魔王の嫁だし、死んでも永遠に魔王の嫁だ。それがどういう事か分かるか??」





 彼女達はナポレオーレの嫁。奴隷として買われた者。お金に目がくらみ結婚した者。ナポレオーレの権力に縋った者。プリンセスみたいな暮らしに憧れたもの。力に魅了された者。イケオジが好きな女性。アクセサリーが好きな者。みんなそれぞれ自分の私利私欲で契約したのだ。そのツケが来たのだ。


 女性陣は我に返り青ざめていく。泣き喚く者。冬夜に縋る者。てんを仰ぐ者。走り出す者。そして女性陣は少しずつ。干からびて灰になってゆく。


「キャーーーー!!!!」

「助けてーーーー!!」

「お金が欲しかっただけなのにーー!!」

「あんなおじさんに騙されるなんて!!」

「死にたくないーー!! 助けてーー!!」

「神様ーー!!」


 女性陣は各々悲鳴をあげながら灰になっていく。冬夜とティーナは立ち尽くし。目を背けてじっとしてるしかない。


 冬夜とティーナはそれを見ているしか出来なかった。


 そして全ては灰になり消えてった。武器屋の屋根には冬夜とティーナの二人っきり。ティーナは冬夜に呟いた。


「冬夜さん。こうなる事が分かっててナポレオーレとの戦闘中女性達にちょっかい出したんですか? 酷すぎます。」


 冬夜は夜空の遠くを見つめる。もう真っ暗だ。星と月が見える。


「良いんだよ。アンデッドになって死んだんだ。アンデッドなら大魔王の契約は消えない。完全に灰になって死んだんなら教会で生き返せる。それでまた新しい人生を過ごせるだろ?? 彼女らはナポレオーレと契約した時点でアンデッドだったんだよ。見ろ。街中のデュラハンも灰になっていく。」





 街中で冒険者と乱戦していた女性の裸。デュラハンはナポレオーレの死と共に人生を添い遂げるかのように灰になっていく。各地で冒険者達が勝ち鬨を上げる。


 ティーナは呆れる。


「まあ、良いですけど。」


 内心ほっとしているティーナ。このまま森の洋館に女性陣を引き連れて帰られても困りましたから。


 星空が導くはじまりの町の戦闘。冬夜は夜空を見て頷く。


「あとはミリアが黄の魔王。ゴーレムダ山田を倒せば終わりだな。それにしてもナポレオーレはなんだったんだ??」


 隣で一緒に星を見上げるティーナ。ティーナの大魔女としての考察を述べる。


「精霊術というのが強すぎたんじゃ無いですか? この世界の魔法では無いので耐性魔法具も存在しないし。」


 この台詞に対し冬夜はポンと手を叩き納得する。


「そうか!! そういう事か!! ナポレオーレは性欲に忠実な大魔王。色欲の大魔王だからな。存在自身が性欲で性欲を吹き飛ばす精気砲に耐えられなかったんだな。」


 いつもは思考が冴え渡る冬夜も今回は分からない事だらけだった。この世界の住人はいつもどこか抜けてる。


 ティーナは不機嫌な顔で冬夜を見つめる。ゴスロリ幼女黒ドレス青髪ロングヘアーに戻った。ティーナは言う。


「それ、どういう事ですか?」


 冬夜は吹き出す。


「ぶ、な、何でもない!! さ、キティ見に行くか? あいつのびてるだろうな。ハハハ。」


「ふーん。まあ、良いですけど。」


 冬夜はカエルモンスターのカエル人間。身長80センチほど。いつも移動する時はゴスロリティーナのドレスにしがみつく。


 冬夜にしがみつかれたティーナはそのまま浮遊術でキティのいる町の門にゆっくり向かった。




                  つづく

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エクスプロードンパンチガール 二人の少女の旅始めます。 猫スラ 雅人 @kameokatawata

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