第16話 夜の舞勇会

 青いドレス、お姉さんの姿になったゴスロリティーナは長い髪を棚引かせながら空を舞っていた。


 はじまりの町、武器屋の屋根の上、大魔王ナポレオーレは叫ぶ!


 大魔女ティーナと大魔王ナポレオーレは市街地の上空で戦闘をしていた。ティーナは全属性の魔法攻撃を無数に飛ばす。全部大魔王は被弾するが傷一つつかない。ナポレオーレの方は闇魔法とアンデッドの使う死の魔法を飛ばす。ティーナはそれを柔らかい肢体で潜り抜ける。ティーナの方が防戦の状況だ。


「愛しのティーナちゃん!! オレを弾けさせてくれ!! もっと!! もっとだ!!」


 ナポレオーレは黒いオーラの玉を無数に投げつける。闇魔法ダークボールだ。


 ティーナはそれを空中で避けながら魔法を唱える。


「相手を撃ちなさい!! サウザンドアイスニードル! メガファーリア×100!! メガフォーリア×500!!」


 アイスニードルは氷属性、ファーリアは炎属性、フォーリアは聖属性。どれもとてつもない数をぶちまけてナポレオーレに打ち込む。大魔女だから出来る技。大量の魔力とMPが無ければ出来ない。


 ナポレオーレは不敵に微笑む。


「さあ、来い!! ティーナちゃんの愛のプレゼント!!」


 ナポレオーレはティーナの攻撃魔法に両手を広げて仁王立ちの受けの姿勢で挑む。


 ティーナの攻撃魔法は全弾命中、普通のモンスターなら跡形も無く消し炭だ。


 しかしナポレオーレは無傷おしゃれな服にシワ一つ無い。


 ナポレオーレは手を降り勿体ぶる。


「はぁ。ティーナちゃん。愛とはこの程度なのかな?? ナポレオーレはちょっとがっかりしちゃったよ。もっと激しくぶつかり合おうよ。魂と魂で。愛と愛で。」


 ティーナは思った。完全に気色悪いおじさんだ。ナポレオーレを観察するにオシャレではあるが完全武装だ。腕、首、胸にあるあのジャラジャラとした悪趣味なアクセサリー。多分あの全てが魔法アイテムだ。アレによってこちらの攻撃魔法の全てをかき消しているのだろう。ホント気色悪い。ぶつかり合おうとは言ってるが鼻からこちらの魔法を受けようとはしていない。腹が立つ。卑しいおじさんだ。


 ティーナはそれでもナポレオーレに聞いてみる。皮肉だ。


「そのアクセサリーはどうしたのです? 多すぎですね。」


 ナポレオーレは自慢する。自慢しながらアイテムを見せびらかす。


「買ったのさ。俺は生まれからの金持ち貴族でね、金なら捨てる程ある。どれも最高級品のアーティファクト。ある時は商人から、ある時は冒険者から、勇者から買い付けた事もあったっけ。んん?! もしかしてティーナちゃん?! この宝石に興味あるの?? 俺の嫁になったらいくらでもあげるよ? 未来のお嫁ちゃん!」


 ナポレオーレは上機嫌。ティーナの怒りは頂点に達する。その時武器屋の屋根の方に気配があるのに気づく。ティーナとナポレオーレは夜の上空だ。


 「ん?」


 ナポレオーレは上空に飛んでいた。その後方、武器屋の屋根の方にナポレオーレの嫁の一団がいる。その嫁の一団が何やら困惑している。


 嫁の一団の前に黒い影、はじまりの町は夜だ。モンスター? オス? カエル?? ナポレオーレの嫁達にちょっかいを出す者がいる。


 ティーナは悟った。叫ぶ!!


「行けない!! 逃げて!!」


「ナポレオーレは瞬間移動のようなクイックムーブで嫁一団の前に飛ぶ。そして黒い影を大鎌で一振り。


「人の嫁に手を出すやつは生かしておかねえなあッ!!」


 カエルモンスターの雨頭冬夜はナポレオーレの嫁達の前で談話していた。嫁達は青い顔で慌てていた。


「お前ら、その首輪外せねえか?」


 裸の女性達ををモノともせず会話をしようとする雨頭冬夜。流石のティーナも驚きと共に呆れ顔。それでこそ男だ。




                  つづく

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