第9話 騎士達御一行

その日はボアウルフを10匹討伐した。

父さんはというと、何体倒したかは教えてくてなかったが、まぁ持ってきた魔石が物凄い量だったから。。ていうかなんか大きいやつがチラホラ。。。やめよう。きっと目が疲れていたんだ。


実力差がこうもハッキリしてると驚きよりも笑いが込み上げてくるんだが。。


そんなこんなで2人で森から出て、整備されてない街道(?)を歩いていると。


「うん?」


父さんが何かの気配を察知したようだった。

そしてその猛禽類のような鋭い目は進行方向とは逆の、つまりは後ろ側を捉えていた。

そして数秒見つめて微笑んだ。


え?


訳が分からず、目を点にしていると


目線の先から馬蹄の音と、鎧が擦れる音が聞こえ、その姿が段々顕になる。


「鎧。。。馬。。。!?騎士!?」


「どうやらそうみたいだな。恐らく俺に用があるのだろう。急いで戻るぞ、ミラに言って準備してもらわいとな。」


「はい!」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


フォーイニクス家にて


「この度は急な訪問になってしまい申し訳ない。」


やってきた騎士の中でも年長で、立場が上であろう男がそう言った。

年長とは言うが、その筋肉質な身体は鎧の上からでもわかる程鍛え抜かれており、兜を外した素顔には、幾多の戦場を駆け抜けた証が刻まれていた。


「いや、それはいいのですが、なぜこの村にいらしたのでしょうか」


騎士相手にこのクールさ、部下の人達も驚いている。


「もちろん説明するのだが、まずはこちらを確認して頂きたい」


男はジンに封筒を渡す。


封筒の中身を見たジンは、鋭い眼光がさらに鋭利なものになった。


「ふむ。殿この話しは本当ですか?」


「ああ。あの森の付近にある他の村では被害が出ている。」


「いや、被害ではなく、この森にの魔物、それもCランク 飛べない怪鳥ヌベンファルスがいるというのは本当なのですか?」


そう言ったジンの眼光は、猛禽類のように鋭いのが通常だが、この瞬間は今まで以上の鋭さで、まるで心臓を貫いているのではないかと思わせる程。それだけに留まらず、その視線には少々殺気が混じっており、部下の騎士は反射で腰の剣に手を置くか固まって動けなくなっていた。そんな視線を至近距離で真正面から向けられた騎士団長はと言うと。。


ニヤ。。。いや、ニチャアアアという奇妙な笑みを浮かべ楽しんでいた。

その顔を見た部下達はため息を吐く。


「本当だ。被害にあった村を調べたところ、幸いなことに目撃した人が存命で、その特徴と魔物の特徴が一致した。生息場所を除けばだがな。それ以外にも、その村の付近の森を調べると足跡も確認できた。まぁまだ確定ではないが、かなりの確率でいるぞ。」


先程となんら変わらない態度で淡々と説明する団長。その様子を見てジンは


「申し訳ありません。少々取り乱してしまいました。しかし、Cランク。。。」


「何、ジン殿がそうなる気持ちも分かる。別に気にはしないさ。それで、本題はここからだ。」


「ありがとうございます。本題と言いますと」


「この被害を解決するために旦那様、御当主様の命により、あの森付近の村に騎士が派遣される。もちろんこの村にも。ただ派遣するのにも時間がかかるため、その間だけはいつも以上に警戒していただきたい。」


その言葉に少しジンの眼が和らいだ。

まぁ元が鋭いため変化が分かるのは親しい人だけだが。


「私1人では限界がある為、助かります。それで派遣にはどのくらいかかるのでしょうか」


「もう既に実行に移っているが、最低半月はかかる。派遣する村が多い上に、この村とお屋敷は距離がある。すぐにとは言えんが、できる限り早く到着するよう御当主様も尽力して下さってることはご理解頂きたい。」


騎士団長は申し訳なさそうな表情になる。


「最低半月は持ち堪えられるよう尽力します」


ジンはそう言った後微笑んで、団長と握手を交わし、お願いします。と言った。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


父さんと騎士さん達が話している間俺は庭で日課の素振りと魔力操作を行なってる。

初めて魔物を討伐した日から俺は魔力操作の仕方を変えた。

 まず、少量の魔力を木剣と両手に込める。

その状態で素振りを始める。一回振って振り上げる毎に残った魔力を操作する。振り上げて振り下ろすまでに眼や脚、上腕、前腕、背中、大腿、脛、等のどれかの部分に魔力を込めて、振り上げてリセットし、降ろすと同時にまた移動さて込めるを行なってる。

これがまた難しく、慣れてない箇所とやりやすい箇所がハッキリしてくる。

 この魔力操作をすることで、回避、防御、攻撃の三つを行う時に、魔力を込めるスピードを上げるだけでなく、相手に合わせてスムーズに切り替えられるようにするのに良いのでは?という発想で編み出された。


そして魔力を途轍もなく消費する中での素振りは、一時的に魔物と戦ってる時の重苦しい独特な雰囲気に少しだけ似てる為、緊張感を持ってできる。さらに魔力の量も増えている気がする。


それを暫くの間続けていると、父さん達の声が聞こえてくる。どうやら話し合いが終わったみたいだ。


素振りを終えて。。


「お父さん。どんなことを話してたんですか?」


「実はあの森に強い魔物が居座ってるみたいだ。近くの村では被害に遭った所もあるみたいでな、そこで騎士が森付近の村に派遣されるんだが、どうやら時間がかかるからその間の警戒はいつも以上とのことだ。だが、フェンも今まで通り魔物を狩ってもらう。と言っても浅いところにいるボアウルフのみだ。」


え?強い魔物が居座ってるって。。まるで何処からか魔物がやってきたみたいな言い方。。


うん?


「お、お父さん?聞き間違いかもしれませんが、明らかに非常事態なのに、狩りをするんですか?」


すると眼が鋭くなる。


「現状居座ってる魔物は高ランクと予想されていてな、そうなると今まで住んでた魔物が逃げて森の外に出てくる恐れがある。それを最小限に留める為にも狩りは必須だ。それに森にいた方が異変を察知しやすいしな。」


「微力ながら尽力します」


内心マジかよ。と思った。ただ、これが普通の人ならば不吉なことの前触れとか思うけど、俺、転生者だからな一応。。ないとは思うけど俺が引き寄せた。。。的な?

うーん。でも今日までの感じ、俺が何か特別な血を引いてる訳ではないんだよな。それこそ勇者みたいな存在だと、七英雄の血を引いてる七英傑家だから。。うーん俺の読み漁った異世界バトルモノライトノベルの中からありそうな展開は。。。


いや、ナイナイ


そもそもチート貰ってないし、変なことに首突っ込んでも碌な事ないのは明白だ。




そんな事を1人で考えてるといつの間にか装備に身を包み、ロングソードを持つ父さんがそこにいた。


「あれ?今日も狩りに行くんですか?」


「あぁ、少しだけいつもより奥の様子を見に行く。狩るのは浅い所でするつもりだが、帰りは遅くなるかもしれない。今日はフェンは森に入らないでいい。明日から毎日入ることになるからな。」


いつもより奥って、確かあの段違いに強い気配のする魔物に近づくってことでしょ。。考えただけでも身体が震える。。


「は、はい。分かりました」


父さんは、それじゃあ行ってくると言い、森へと向かった。

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