未来に行ける機会(機械)
磨白
未来に行ける機会(機械)
ーおめでとうございます!!!貴方は未来の旅プロジェクトに当選しました!!ー
朝、ポストを確認すると、政府からそんな手紙が届いていた。
政府が制作している未来列車。要するにタイムマシンの当選報告である。
「母さん!!!未来列車当選したよ!!!」
俺は母親を叩き起こし、政府からの手紙をドヤ顔で見せつけた。
母親は、目を数度ぱちぱちさせた後、
「ほんとに!?やった、やったわね!!!」
と寝起きとは思えないテンションで騒いでいた。
なぜこんなに喜んでいるか、それは未来列車に当選すること。それ即ち宝くじが当たったことと同義であるからだ。
政府が前から制作している未来列車。未来で起こる未曾有の危機に予め対処するために作られたものだ。
例えば、新型のウイルスや天変地異など。それを予め予測することが出来てさえいれば、予防する術はいくらでもある。
環境破壊が終わらない昨今、地球では何が起こるかわからない。
人類を救うためには、未来を知っておくほか無いというのが政府の考えらしい。
しかし、この機械はまだ未完成である。2年前に動物での実験は成功したらしいが、人間はまだわからないそうだ。
そのため、人間で実験するために民間人に向けて募集がなされたのである。
勿論、危険が伴うので報酬がでる。その金額なんと10億円。
拘束時間は一時間程度。機械を使って未来に行き、未来の政府に元の時間に返してもらうだけ。
動物での実験も成功している。
皆こぞって応募し、倍率がものすごいことになっていたのである。
「応募してくださった皆さんありがとうございます」
俺は数人の人と一緒に研究室にいた。
いよいよ今日は未来にいく日だ。
周りの人を見渡すと年齢も性別も様々である。やっぱりいろんな人が応募していたんだな。
「知っていると思いますが、今からあなた達には未来に行って貰います。こちらがその機械です」
研究員が手で指し示した機械は、ただの列車にしか見えないものであった。
「10日前にも犬を使った実験を行っており、無事に帰って来ております」
研究員はタブレットの映像を俺たちに見せる。
列車のような機械に犬が乗せられ、消失。
1分後にまた列車の中に戻って来た。
「このように未来に送った後は、未来の研究員の方に帰してもらえます。もし、人間の転送は不可能で、機械が作動しなかった場合でも、しっかり報酬はお支払いしますので安心してください」
おぉ〜。と声が漏れる。知ってはいたけどこのように実際見ると凄いものだな。映画みたいだ。
「では、一人ずつ送って行きますね。送るのは今から丁度、2日後になります」
「もっと遠くの時間に送らなくても良いのですか?」
参加者の一人が手を上げて尋ねる。
「はい。もし、機械が未来で作動せずに帰すことができなくなっても、2日後の未来であれば、暮らすのに然程問題ないでしょうから」
成る程、もし失敗してもあまり影響ないってことか。
「それでは、一人ずつ列車にお乗りください」
まず、一番最初の人が列車に乗せられ、未来に送られる。
機械は正常に作用したようで、その人は列車の中からいなくなった。
そして、俺の番が回ってくる。
俺は列車に乗り込んだ。
「それでは始めますね、とその前に」
俺は研究員から赤いボタンを渡された。
「これは?」
「未来に行けていたら、このボタンを押してください。そうすると、電波が過去に転送され、実験が成功したかどうかがわかります」
「成る程、わかりました!!!」
「はい、それではよい旅を……」
俺は未来に転送された。
列車の外に出ると、研究員と先に転送されたメンバーが待っていた。
「無事に成功したようですね、ではそのボタンを押してください」
研究員にそう言われ、俺は赤いボタンを押した。
次の瞬間、研究員は俺の前から姿を消した。
それと同時に、眼の前に札束と、手紙が出現した。
手紙を手に取る。
ー2日後の皆さまへ
世界の危機を救っていただきありがとうございます。本当に危ないところでした。
実は地球は2日後、あなた達からすれば今から12分後、未曾有の危機に襲われ、生命は滅亡する予定でした。それに気がついたのは2年前です。ある一定の時間を超えて未来に動物を転送すると、帰って来ないことがわかりました。
調べた結果、2XXX年 7月6日に生命は滅亡していることが判明しました。
その理由はわかりませんが……
それからというもの、全人類を文明ごと過去に送ることによって延命することを試み、研究しました。今の技術では人類を救えなくとも、長い時間をかければ可能なはずです。
皆さまは現在、未来に行っているため、過去に送ることは出来ませんが、せめてものお詫びとして、報酬は倍にしてお支払いいたします。
あなた達が、この機械が正常に作用すること証明してくださったおかげで、安心して人類を過去に転送できます。
本当にありがとうございました。人類を代表して感謝申し上げますー
手紙を読み終えた俺は弾かれたように外に飛び出す。
周りには人は愚か建物すら見当たらない。
空は赤く染まっており、俺の記憶にはない巨大なナニカが空から飛来していた。
俺は未来と20億円を手に入れた代わりに、全てを失った。
未来に行ける機会(機械) 磨白 @sen_mahaku
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