六、汚れっちまったダイヤモンド
「悪夢ばっかりほおばっても、死体にもなれないぞ」と、あなたは言った。
「死人にもならずに、いったい、なにやって生きてんだ」と、人生の意味不明をほざく。
だから叫びが喉元に、悪魔のように引っかかる。
「取れない! 取れない!
聞き! 聞き!」
そこで交渉。いいわね高尚。けたけた哄笑。
胸に校章。鼻に胡椒。ハクション! フィックション! ノン・フライ麺タ・フィクション!
馴れ初めはただのSNSだ。最初は書き込みにどっちかが反応してるだけだったのが、不意に意気投合、旦那を殺してえと別の掲示板で日々暴れていたのが限界に達した翌朝のことだった。オフの彼の顔は旦那の百億倍はカッコよかった。そして組織の大物だった(あとで小物とわかった)。
さらに付き合ううち、お互い同性愛だと知った。旦那のことは世間体のための体裁である。バチが当たっても仕方ないことだが、日々理不尽だった。嫌々セックスした。全ては毒親の言いなりで見合いした自分が悪いと、分かっていても悲しかった。
だが居間の彼と知り合い、ぜんぶバカバカしくなった。くだらない。こっちのが全然、百万倍おもしろいし、楽しいし、生きがい全開だ。あんな無意味な不快。なんの得もない我慢。もういらない。ぜんぶいらん。切って捨てろ! 消してしまえ! 人生から無意味を消せ! 生きることを意味あるようにせよ!
「糞ヘテロのテロは、あの世行きだ」と、夕暮れる倉庫にて、二人で完全犯罪をバズーカ砲とバースディケーキで準備中、「呪いは楽しく愉快に踊れ、戯れ」なんて、歳の数だけ蝋燭だけど。
ターゲットは、お前の金玉より遠いぞ。
なぜなら、ドーニデモ愛するチケット病を買い占めた、買い込んだ、入れ込んだ謎の組織の最後と、元締めと、中央のあいだを密かに撲殺したら、誰も知らなかった。バレやしなかったんだ。ひゃっはー、ざまみろ。
やり終えて逃げ出したバス停の隙に、蛇のように絡み付いてりゃ、見つからない。素通りする奴らのアメ車を確認しだい、
「よし、いけ」
その行方は果てがないのに、まるで手を叩いても叩いても、信じられない神みたいだ。
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いつかは、こうなると知ってたさ。追い詰められる日が、絶対の夜明けのように、山の端から顔をこう、ぬっと。
「結論ばかりを助けておくれ」とスマホを食べてしまっても、相手は魚のように覚えているぞ。ぴちぴち跳ねるな、憂鬱。
死んだからって、死んだフリするな。踏まれても、蹴られても、エデンの塊ばっか、夢ばっか。
蛇だ。林檎だ。妊娠だ。病院にも行けない、あなたの私のおなか。これどうすんだ。
「動物だったら、よかったのに」
なにを好き好んで、頭の中いっぱい泣き叫ぶなら、花にも出来る。なんて、あなたは血も涙も糞より匂わない。
立てこもる埠頭の倉庫にて。雨あられの銃撃は、プレハブ屋根をうがつ嵐みたいに横殴りの縦殴打。でも我々の心には届かないぞ、と最後まであなたへの愛。
「嘘と詐欺ばかりを信じるな。愛と真実と本音ばかりを疑い、俺はお前の真の姿しか好きじゃない」
なんて彼は嬉しいことを口からマシンガンだったが、その瞳にはかげりが見えた。秋の日落ちの長い長い影のよう。
「知りたくもない分解ミイラの保存狼男は、月夜の朝に、悔しくもないのに遠吠えし、遺言には反省ゴッコが冴え渡る。俺は意味がないんだ、ほっといてくれ」
だって。
まるで食い物と餌。
そして我々は抱き合ったままスポンジみたいになった。体を通過する無数の鋼鉄が何かを語る。聞きたくないが耳をふさげない。もっと強く抱いて。どっちも力ないけど。
血の海を、掘りと勘違いのカラス一羽がひょこひょこ来て、
「釣れますか?」
そうだ僕らは、今日も明日も、あさっても、
汚れっちまったダイヤモンド。
それは、誰でも持ってる輝きだらけ、夢だらけ。寝ても覚めても寝てみても、食い物と餌なんて、ただの普通のことさ。
そう思うだろう、息子よ(予定)。
ここは天国か、と思いきや。
見知らぬノックと、知ったか返事が、いつか仲良く手をつなぐ日が、角笛みたいに「ぷっぷくぷー」
こんな私らの、
まるで絶望みたいな握りかた。
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