第3話 初めての女友達
休憩時間が終わり、料理長に賄いスペシャルのお礼を言って、厨房の片づけを手伝いながら、ホールの接客をしていると、店長が近寄ってきて、僕に感謝してきた。
「斎藤君、ありがとうね。俺ももう年だからさ、新店舗とか新人指導とか体がいうこと聞かないんだよね。」
まあ確かに50歳を迎える店長には、きついかもしれない。
特に気にしないで下さいと、店長に伝え、いつものようにランチで余った賄い用のとんかつの残りを袋につめ、隣のハンバーガーレストランに持っていく。
すると、隣の店でもいつものようにランチであまったハンバーガーを袋に入れたものを用意してくれているので、物々交換する。
「斎藤君、ありがとうね。君がとんかつ持ってきてくれると、ホールの女子たちがくれくれうるさいからさ、ありがたいことだよ。」
ハンバーガー屋の店長が言うには、僕がシフトに入っている月火木金の4日以外の水曜日は、皆休みたがるということらしい。
僕が出勤しない日に来ても僕を見れないからつまらないのだそうだ。
そんなに僕は面白いですかね。
と言った時のハンバーガー屋の店長の笑った顔は今でも忘れない。
絶対僕のことをバカにしていた。
そんなことを想い出している場合じゃない。隣の店長さんに、僕が社員になったら4月からこの店からいなくなることを告げると、随分と焦っていた。
研修が始まるまで、あと2週間はあるので、それまではよろしくお願いします。
ハンバーガーレストランを後にして、とんかつ屋に戻り、17時になったのでタイムカードを押して、店を出た。
「すいません。斎藤さん。ちょっとよろしいですか?」
「はい、なんでしょう。あっ、隣のお店の接客担当の人ですよね。」
「えっ、はい、私のこと知っててくれてたんですね。」
「ええ、そちらの店長とあまりものを交換する時、レジに立っているのを時々お見かけしていました。」
「うれし~、勇気を振り絞って声かけて良かった。さっき店長から、とんかつ屋の斎藤さんが移動になってしまうって聞いて、どうしてもお話ししたくて。」
「お話ですか、僕は全然暇なので、いくらでもお話し聞きますけど。」
「良かった~。拒否られたらどうしようかと思って緊張しちゃってたんですよ。」
「僕がそんなことするわけないじゃないですか。」
「そうですよね。」
「それで、どんな話があるのですか?」
「え、えーと、話があるというより、私が斎藤さんとお話がしたいというか。」
『あれ?急にトーンが下ってきたぞ。不味いこと言ってしまったかな?』
「すいません。僕としゃべると会話が続かなくて退屈になりますよね。今まで誰とも人付き合いしてこなかった弊害と言うか、そういうのが表に出てしまうんですよね。」
「誰ともって、斎藤さん絶対モテますよね。周りの女子がほっとかないでしょ。」
「いえ、今まで誰ともお付き合いしたこともないです。」
「誰ともって、ああ、言い寄ってくる女がたくさんい過ぎて、一人に絞れないやつですね。」
「だから、誰にも言い寄られたこともないです。こうやって女子と話すことなんて、こっちの世界に来てから初めてですよ。」
「こっちのって、斎藤さん帰国子女だったのですか?」
「いやまあ、遠くに行っていたのは間違いないですが。」
「ごめんなさい。興奮して個人情報聞き出そうとしてるみたいで、私、斎藤さんのこと遠目で見ていつもかっこいいなって思ってて、できればお友達からでいいので、PINEの交換してもらえませんか。」
格安スマホ買っておいて良かった、と思いながら、僕に話しかけてきてくれた木内梢さんとPINEの交換を済ませ、また今度と手を振り別れ、帰路に着いた。
家に帰り、しばらくすると、先ほどPINEの交換をした木内梢さんからメッセージが入ってきたので、初めはおぼつかなかった入力操作も、少しずつ上手になるくらい結構な時間やりとりをした。
異世界勇者候補、現代で魔王になる もぴー @papakanon
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