第28話 濡れる透ける頬が赤くなる

木の下で雨宿りをする僕ら。ただ、すでに濡れているわけで、白い服はよく透けて。


「苺、服が透けてるぞ。」


目のやり場に困るが苺が風邪をひく方が困る。親父さんにシバかれかねない。だから、リュックサックからハンドタオルをさっと取り出し苺に渡したただそれだけなのに


「きゃー。」


唐突な苺の張り手。ビンタでもなく張り手!?コンパクトなその振り抜きは目で追えても避けることは出来なくて、バチン。


「ぎゅぷっ」


躱そうと身をひねった時に頬にヒット。


「いっっっってーーーーー。」


乾いた張り手の音の後、僕の悲鳴が鳴り響いた。あまりの痛さに蹲る僕に苺は


「すみませんすみません。」


と土下座までしているが。


「土下座しなくていいから、まずは体を拭いて服着替えな。」


「やっぱり先輩はエッチです。」


違うわ。この頭の中お花畑乙女め。


「はぁ、バスタオルで囲ってやるからそれで着替えろ。せめて上だけでも着替えておかないと、いくら苺でも風邪ひくぞ。」


納得したのか


「絶対見ないでくださいね。絶対ですよ。」


漫才のフリのような言い方をしてもぞもぞと着替える苺。まぁ、布がこすれる音が聞こえる程度でうろたえる僕ではない。


「着替え終わったか?」


「はーい、終わりましたよーだ。」


少し不機嫌な苺。


「先輩、覗かれないなんて乙女心が傷つきました。」


イラっ。デコピンでも喰らえ。手加減はいらないな。お仕置きだ。


「いったーい。」


僕も痛いんだ我慢しろ、石頭。


「自分の体はもっと大事にしろ。粗末にするな。僕以外にやったら・・・」


「やったら。(;^ω^)」


ニヘラ顔がうぜえ。もう一発。うきゅう、とおでこを抑える苺。一端、キュン死させといたほうがいいな。


「嫌だよ。」


あざと過ぎたか?


「尊死。」


久々に気絶する苺。懐かしいなぁ。っと、まだ雨は止んでないからな。気絶してる苺を負ぶって木の下の雨漏りしてないところまで運んで降ろす。その後で、自転車も雨でぬれないところまで運ぶ。一息つこうと苺の方を見ると。苺は地べたで寝ていた。頬は泥で汚れている。


「仕方ねえな。」


苺に膝枕。下に石とかがあったら跡になるだろうからな。女子にそれはかわいそうだろう。頬も吹いたしこれで良いだろう。


「ぐーぐー。」


狸寝入りしている苺の頬は赤かった。かわいいもんだ。ただ、僕も眠い。というか、僕の方が苺よりも断然眠い。少しぐらい寝てもいいよな。木に寄りかかり、苺の頭に優しく手を乗せ僕は少し仮眠をとることにした。



「・・・んぱい、おきてください。先輩起きてください、」


せっかく寝てたのに苺に起こされた。


「おお、よく寝れたか。」


「はい、それはとても、、、、じゃなくて。早く帰らないと真夜中になっちゃいますよ。」


ああ、確かに太陽の位置は頂点に近かった。


「ああ、もう正午になるか。」


「もう、じゃなくてすでに午後ですよ。」


「最初、順調にいけば何時間かかる予定だっけ。」


「6時間ですね。今は14:00です。」


「20:00着予定か。遅くなちゃうけど安全運転で行こう。」


「そうですね、帰るまでが旅行ですから。」


そっからは僕らはただただこいだ。脚もパンパン、途中泊まってスポドリに見ながら。気づいたらあたりは暗くなっていた。


「もう暗くなってきたな。ライト付けておけよ。」


「はい、わかりました。」


会話はほとんどない。夫婦ってこんなもんなんだろうな。うちの両親が異常なだけでって、何考えてるんだ僕は。こんなことを考えていた自分が恥ずかしい。まだ苺と付き合ってるわけでもないのにさ。そんな僕に急に苺は話しかけてきた。


「先輩。」


「なんだ?」


「流星群綺麗ですね。」


「ああ、今日がピークなんだ。本当はあの旅館で見たかったんだけどな。」


「先輩はロマンチックですね。だってあれ、みずがめ座流星群ですよね。私の星座と同じ。先輩のも見たかったな。」


勉強してたんだ、嬉しいな。見た目と違って中身は乙女と程遠い残念美少女だったのにちゃんと女子力を身に着けていて。だけど、


「僕のは無理だよ。乙女座流星群は昼だからな。見えないよ。そんなことより、せっかくの流星群だからさ、ちょっとこの辺から見ないか?」


今は帰路最後の峠の上。後はこがずにシャーっと下っていくだけだ。


「そうですね。じゃないとなんだかもったいないですね。」


僕らは自転車を適当なとこに停め、ベンチに座った。


「ふとももパンパンですね。」


「そうだな。」


「楽しかったですね。」


「そうだな。」


「もう、そうだな以外で答えてくださいよ。」


そろそろ覚悟を決めるか。


「苺、大事な話があるんだ。聞いて欲しい。」


僕史上最高速で動く心臓を押さえつけ苺の眼の前に立つ。

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