第27話 夏の天気は突然に

女将さんが来た。そのタイミングで苺が飛び起きた。ああ、もちろん僕の上でだ。そしたら、僕どうなると思う。鳩尾に膝は痛いだろう。


「あらあら、お二人さん。昨夜はお楽しみでしたね。」


ドラクエかい。まぁ世代的にそうなるのか?


「ははは、そんなんじゃありませんよ。彼女が僕の上で寝ちゃってただけですよ。ほら、よだれがここに。」


そう言ってずきずき痛む個所を差し、


「先輩、かかか彼女って。」


あ~、やらかした。訂正入れておくか。


「もちろん、彼女っていうのはガールフレンドじゃなくて代名詞のSheの方です。」


そう言ったが女将さんは


「今は、でしょう。いやぁ青春っていいものですねえ。うん、身銭切りましたがそれ以上にいいものが見れました。少し若くなった気がしますわ。おほほほ。」


まぁ、苺への誤解は解いたし、女将さんが楽しそうだからいいか。


「それでは朝食を持ってきますね。」


すすすっと立ち去る女将さんの背筋は少し伸びていたような気がした。



「お世話になりました。」


今朝の朝食は白米、みそ汁、サバの塩焼き、納豆、小松菜のおひたし、朝食にしては豪華な和食だった。もらい過ぎたな。だから、こうしてしっかりとあいさつをしているのだが、


「いえいえ、こちらこそ。ごちそうさまです。」


はははっ、ここまで丁寧にあいさつしなくてもよかったな。


「女将さん、料理美味しかったです。特に茶わん蒸しが好きでしたー。」


いやいや、他に言うことあるだろ苺。


「あれ、試作品だったのよね。そこまで喜んでくれるならレギュラーメニューにしてもよさそうね。」


おおふ、手のひらドリルは許してくれよ。苺、グッジョブ。


「それでは僕らは帰ります。ありがとうございました。」


さーて、温泉でリラックスできたけど、苺プレスされた体に鞭打って自転車をこぐ。今日中に帰宅できるかなっと。



「先輩、旅行に誘ってくれてありがとうございますね。」


移動中、苺が話かけてくる。向かいあうことは出来ないが、僕ぐらいは視線を苺に向けておこう。


「どうしたんだ、急に。」


「いや、楽しかったんですよ。ただ、その分残念って言いますか。もっと先輩と一緒にいたいと言いますか。」


僕も同じだよなんて口が裂けても言わなかった。恥ずかしいからな。


「そうか、そんなに僕のことが好きだったか。」


「そうじゃないわけじゃないですけど。」


結局好きって言っちゃってるじゃん。あぁ、


「好きだよ。」


「えっ?何か言いました?」


「いいや、何も。」


甘酸っぱいな。これが青春ってやつか。そう思ったのも束の間、ズザァァァ。急な大雨。上をみれば近くには入道雲。ほんと間が悪い。


「とにかく、雨宿りをしよう。道の端の木の下。」


出鼻を挫かれた帰り道。まぁそれでも、苺といられる時間が延びるならいいか。


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