第22話 僕らの旅行記2日目
朝、目が覚めたら一号が上にいた。
「重い。」
見た目が細くてもコイツは筋肉の塊、密度が違う。
「先輩おはようございます。」
なんともないといった風に挨拶をしてくる一号。それも向かい合っている状態で。
「とにかく降りてくれないか?」
そろそろ手足がしびれてきた。
「いや。」
おい、子供じゃないんだから。
「夢の中でぐらい甘えさせてくださいよ。」
そう言って抱き着いてくる。さてはコイツ寝ぼけてるな。今降ろすか?それとも甘えさせてやってから降ろすか?・・・もちろん後者だな。
「仕方ないな~苺は。」
「えへへ~、撫でてくれた~。」
至近距離でこのにっこりフェイスはヤバい。っていうか、夢の中の僕は一号のことをちゃんと名前で呼んでるんだな。しばらく撫でていると一号が
「そろそろ起きなきゃね。ありがとう、イマジナリー先輩。」
明晰夢をみれるタイプだったのか。意外だな。一号はそんな知的な感ジ歯しないのにな。そろそろネタ晴らしするか。
「一号、夢じゃないぞ。」
さっきまでのふにゅけた顔から一気に血の気が引いて
「嘘ですよね。これは夢ですよね。」
そう言って、僕の返事も聞かずに頬をつねる一号。
「先輩、頬がいたいんですよ。これは夢ですよね。この痛みは真っ赤な嘘ですよね。」
うん、錯乱している。あわわわって感じで慌てふためいている。やっぱり一号はこうでなくっちゃ。
「真っ赤な嘘の使い方間違ってるぞ。ちなみにこれは真っ青な真実ってところか。」
「ぎにゃああああああああああ!!!!」
僕らの朝は一号の悲鳴で始まった。
あの後、一号をなだめ、昨日の残りを温めて朝食は済ませ、おばあさんに鍵を返し宿を出た。
「一号、いい加減忘れろって。僕はきにしてないからさあ。」
「気にしてないって何ですか。気にしてないって。
私そんなに魅力ないんですか(# ゚Д゚)」
一号が恥ずかしがってるかなって思って気を使ったつもりだけど、乙女心って難しい。そんなこんなの自転車旅、まだまだ序盤だっていうのにこの先が心配だな。海を横目に僕らの旅は続く。
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