第21話 初夜じゃねえよ色ボケ

少し早め、3時少し過ぎぐらいに僕らは宿に着いた。ちなみに言っておくと宿はほとんど民泊だ。学生の小遣いではそれが限界だ。駐輪場に自転車を停め、熱中症対策のスポドリを飲みながら玄関へと向かう。すると、


「おお、今日の宿泊者さんかい。いやぁ、お二人さんは夫婦かい?」


ぶふぉお。スポドリが鼻から逆流するとこだった。いきなりなんだこのおばあさんは。とりあえず角がつかないように


「いえいえ、僕らは学校の


「はい、いずれそうなる予定です。私たち許嫁なので。」


一号が口をはさみ、でまかせを言う。ちょ待て。おばあさん気づいてくれ、嘘なんだ。


「そうねそうね、若いっていいわねえ。若いころわたしも爺さんと旅に出ていたわねえ。」


そんなこんなで、暖かい視線を向けられつつも宿の案内をされて、、、


「ここが風呂じゃ。」


露天風呂じゃないか。それも庭に。


「それじゃあねえ。お盛んもほどほどにねえ。」


しねえよぉおおお。玄関までおばあさんを見送り、残された僕ら二人。


「にしても、あそこまで言われて動じないなんて成長したな一号。・・・一号?」


僕の後ろに立っているであろう一号の方を見ると。


「立ったまま気絶しているだと。」


やっぱり成長してないか。僕は枕と掛布団だけとって一号を寝かせた。さてと、僕は先にお風呂入っておこうかな。



「ふー、いい湯だった。」


風呂から上がり更衣室で着替え中の僕。そういえば一号は太もももんでないまま寝ちゃってて乳酸たまってるはずだけど大丈夫かな。上がったらもんどいてやるか。


一号の様子を見に行くと寝ていた。


「いっちょ、揉んだりますか。」


ん?今ピクッってしたな。ははーん、タヌキ寝入りか。ま、それならそれでいいけど。いかがわしい気持ちは一切ないしな。


「ふん、」


「ん///」


凝ってたんだな。お疲れさん。


「よし、こんなもんで良いだろう。」


そろそろお腹もすいたし、そろそろ夕ご飯でも作るか。おばあさんから貰った漬物と米があるからそれでいいか。今から米準備すると吸水込みで1時間ってところか。時間もあるし一号にイタズラしてしまおうか。


「一号起きてるだろ。」


横向きに寝てるけどピクって反応してる。起きない。だませてるつもりらしい。これならどうだ。


「寝てるのか?今日は疲れただろうしな。」


寝返りのつもりか?腹を上にして誘ってんのか。癪だな。ならこっちだって本気出してやる。


「熟睡してるんだな。今なら、」


少しずつ一号の顔に近づいていく。それで、


「パシャッ。」


接写してやったぜ。それでそのまま


「一号、起きろ。気づいてんぞ。」


一号を起こしてスマホの画面を見せつけ


「何を期待してたんだww。」


からかう。一号は顔を真っ赤にして。ぽこぽこと叩いてくる。一号は座っていて、僕は膝立ちしてるから今度こそそのポコポコは皆が想像する通りのポコポコになっていた。それで顔に当たってるわけでもないから、一号の気が済むまでポコポコさせておいた。にしてもながいな。っていうかよくそんなに体力もつな。僕なら二の腕痛くなって途中で止まるぞ。


「ピピピピ」


吸水時間を測っていたタイマーがなったのでここらで切り上げるか。グワシと一号の手首をつかみ。耳元で


「そんなにキス、したかったのか。」


イケボを無駄遣いする。さすがの一号も赤面して、


「もう知りません。私は風呂に入ってきます。」


プンプンって擬音がよく似合うようなぷくぷく頬っぺたで出ていく一号。


「さて、一号が上がってくるまでにご飯用意しといてあげようかな。」


米を火にかけた後で、近くのコンビニで少量の調味料とアイスをささっと買ってきて、野菜炒めを作り一緒に食べてその日は寝た。ただ、布団が一つしかなかったこともあり、寝る直前に一号が


「初夜ですね。」


なんて言うもんだからちょっとドキッとして、なんか負けた気がした。この締め付けられるような気持ちって何なんだろうな。あ、アイス食べてないや。これはお仕置きに使えるな。明日の朝、試してみるか。今日は楽しかったけど精神的に疲れたな。ったく一号め


「初夜じゃねえよ色ボケ。」


「え、今なんて言いました。ねえ先輩何とかいってくださいよお。」


ベタベタ触ってくる一号を無視して瞳を閉じる。無視だ無視。

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