第20話 僕らの旅行記1日目
「ふああ」
朝日に照らされ目を覚ます。目覚めのいい朝…というわけにはいかず。
「はぁぁぁ。」
目の前にいる一号を見て、昨夜のことを思い出す。確か、
「先輩、先輩、明日っからいよいよ新婚旅行ですね。」
ぶふぉっ、吹いた。
「下らん事言ってないで寝ろ。」
その後も遠足前の子供のようにしつこく(物理的にも)絡んでくる一号を無視して無理やり寝たんだった。
つまり、今コイツが起きられないのは自業自得だから
「せい。」
「いった――い!!」
デコピンで起こしてやる。
「おはようございます、親父さん、おばさん。」
眠気眼の一号を引っ張ってきて食卓に座らせる。
「ははは、苺は楽しみで寝られなかったか。」
「廻くん、苺を頼むわね。この子が無理しないように気にかけてあげて。」
「はい、お任せください。苺は妹みたいなもんなので。ちゃんと後方から見守っておきますよ。」
「ガーン」
一号、口に出てるぞ。そんで、親父さんを無視してやんなよ。ほら、親父さんが泣いてるじゃないか、かわいそうに。
そんなこんなで僕らはリビングを出て、2日間分の着替えとチューブと小さい空気入れを入れたリュックサックを背負い、双方の両親に見送られ、旅に出た。
「先輩、もっとペース上げちゃいません。」
ヘルメットからはみ出した黒髪がほぼ水平になるほどの速度で走ってるっていうのにもっと早く走ろうとする苺。
「そんなに早く着こうがチェックインの時間は決まってるんだからな。」
後でバテタリ、筋肉痛のことは心配しなくていいだろう。なんせ、陸上部の期待のエースだからな。ただ、
「せっかくの旅行なんだから、景色も楽しめよな。」
「え~、わざわざ見るような景色なんてないですよ。」
一号の言い分には納得できる。出発したばかりで川とか盛だとか見慣れた景色ばかりなんだから。海の近くを走るのも2日目以降だしな。
「なら、早めに行って近辺を探索してみるか?」
「はい、そうしましょう。」
「確か、川沿いに和風喫茶があったと思うからそっちにでも行くか?」
「はい!!」
さっきの”はい”よりも断然熱量があったな。どんだけスイーツ好きなんだよ。僕もだけど。
その後、道中でロードバイクの集団を追い越して着いたのは
「「蕎麦屋?」」
和風喫茶だと思っていたそれは老夫婦が営む蕎麦屋さんで、奥さんが作った抹茶スイーツがSNSでバズってしまい。喫茶だと思われてしまったらしい。
「先輩、お昼ご飯ちょっと早いですけどここで蕎麦食べていきませんか?」
店主に同情した一号がそういう。まぁ、僕もちゃんとした蕎麦なんて食べる機会そうないから、いいかと思って
「ああ、そうしようか。ちょっと早いけどお腹はすいてるからな。」
そうして急遽昼食を、最初お茶しようとしていたここでとることとなった。
どうやら、自家栽培のワサビとネギを使用しているらしく、蕎麦のふわっと広がる風味の後味がサッパリしていてとても満足の行く蕎麦だった。
まあ、一号がワサビの塊にあたり悶絶して、急いで水を飲んで、間違えて僕のお茶を飲んでまた悶絶して、と忙しかったけどな。
もちろん、スイーツも頼んだよ。僕が抹茶かき氷で一号が抹茶パンケーキ。食べすぎじゃないかって?大丈夫、僕は太りにくい体質だし、一号は
「スイーツは別腹なんです。なので太りません。」
だってさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます