第16話 後の祭りの方が騒がしい

朝日がさし、僕は自室にて目を覚ます。


下からは肉のいい匂いが漂ってきている。


それと


「小豆?」


肉と小豆の食い合わせなんて聞いたこともないがどういうことだろうか?


一回に降りると驚愕の光景が広がっていた。


「廻~。おはよう。昨日はお楽しみでしたね。」


「バッキャローーー!!」


我が家は今日も朝から騒がしい。



僕の怒声にパパンも起きてきて、


いきなり取り調べが始まった。


朝食とともに(ちなみに小豆の匂いの正体は赤飯でした。馬鹿母め。)


「ねえねえ廻、本当に昨日何もなかったの?」


「(不良はボコったけど)別に特に何もなかったよ。」


ママンはすーぐ良からぬことを考える。


「いーや、今の顔は何かを隠してる時の顔だ。」


そのくせ、変なところで勘が鋭い。


観念するしかない。変なことを訊かれてボロを出す前に白状しよう。


「実は昨日さ・・・」


と昨日の昼からお祭りのことまでを一通り話し終わった。


「さすが私たちの息子だ。よくやったぞ。」


「あなたもかっこよかったわよ。


私を助けてくれたときなんか」


早速2人だけの世界に入る両親は放置して


「ご馳走様。」


席を立つ。


「なにか用事でもあるのか?父さんが送ってってやろうか。」


「いやいいよ。苺との待ち合わせだからさ。


送ってもらう距離じゃないし。


あいつ、恥ずかしがっちまうだろ。」


「そっかそっか、廻も苺ちゃんのことを意識して・・・


良し、行ってこい。」


G.Jじゃねえよ。ったく。


「そんじゃ、行ってきます。」


僕は家を出て隣の家のチャイムを鳴らし


「ようきたな。久繰の坊主。」


出てきたのは親父さんだった。


「おはようございます。」


頬がひきつる。朝っぱらから殴り合いは嫌なんだけどな。



「この前はほんとすまんかった。」


リビングに通されいきなり謝られて混乱する僕。


「ちょっ、頭上げてくださいよ。何があったんですか。」


頭をあげ親父さんは話し出した。


「実はな・・」



「昨日一日中備考尾行してたぁ!?」


どうやら親父さんはルンルンで服を選んでいる一号をみて、


一瞬でデートかと疑い、有給をとりついてきてたらしい。


「私は君を誤解していたよ。


まさか娘のためにあそこまで体を張ってくれるなんて。


不良どもをぶちのめし、野次馬どもから苺を守り、


無防備な苺を前に一切手を出すこともなく。


君ほどの男になら娘を託せる。」


態度が改善されたのは嬉しいことだが、


誤解は解けたどころか深まっている。


「親父さん話を聞いてくれ。」


「ああ、廻君。お義父さんと呼んでくれたまえ。」


「いや、親父さん。僕はまだ苺とお付き合いしていないぞ。」

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