第15話 林檎よりも赤く

不良どもとの喧嘩が開始したのはいいが、数が多い。


一人とやってる間に袋叩きにされたらたまったもんじゃねえ。


どうしたものか?


そう思案する間にも奴らとの距離は縮まっていく。


「ラッキー。」


活が良い馬鹿が一人、バットを振り上げて突進してくる。


振り下ろされるバット。


これを軸足を切り替え腰を捻り、紙一重でよけ、


左手でバットの持ち手を抑え、


相手の左手の外から内側に向かうように右手通す。


「ぐふう。」


完全にロックした後で鳩尾に蹴りを入れる。


そして、力が緩んだところでバットを奪い取る。


「そこはひでぶーだろモブが。」


仲間がやられたこととに激昂し奴らは突撃の勢いを増した。


僕は冷静にバットを前に突き出す。


どこぞの漫画で見たことがあったので真似してみたのだ。


相手との間合いの確保、攻撃よりも防御に重きをおいた構え。


「うおーーーー!!」


むさくるしい連中が突っ込んでくるのを、


バットの切っ先で左右に流し、膝蹴り、肘鉄で着実に淡々と処理していく。


「さーてと、邪魔者も片づけたしさっさと戻ろっと。」


こうして馬鹿どもとの戦いは終わり僕は一号のもとに向かう。



戻ってくるとそこには


「私、人を待ってるんです。ほっといてください。」


ナンパされてる一号がいた。


「良いじゃん。俺と遊ぼうよ。


こんな場所に女の子を一人にさせる奴なんてほっといてさ。」


またか、と呆れつつ


「そうだな、お前みたいなやつがいるもんな。


一号すまん、待たせたな。ちょっと混んでてな。


じゃあ行こうか、花火がよく見える場所知ってるんだ。」


一号の手を引いてこの場を離れる。


「おい、俺を無視してんじゃねえよ。」


激昂したチャラ男が蹴りかかってくる、


僕とてめえの間にさっきまでナンパした相手がいるってのにさぁ。


それに一号はその辺の男よりは強いぞ?


「てやぁ。」


脚の振りだけで髪がふわっと浮くほどの素早い前蹴りが男の股間にヒット。


それにお祭りだけど僕らは普段通りの恰好で下駄ではなくスポーツシューズ、


「ぐふぉ・・・」


その場で声も出せず蹲るチャラ男。


「男として同情はするよ。許しはしないけど。」


「先輩早く案内してくださいよ。」


コイツ、ホントに興味ない奴に対して容赦ねえな。


「ハイハイ。ついて来い。」


そうして僕らはチャラ男と別れ山の上の竹林に向かう


「先輩、本当によくみえるんですか?」


まぁ、竹が生い茂っている場所の眺めが良いのか不安にもなるだろう。


「ギャップって知ってるか?」


「はい、あの森林の真ん中にポツンとあく隙間のことですよね。」


「そうそう、(高1の2学期に)生物基礎で習うやつ。」


なんでわかんだよ。僕の後輩、優秀過ぎないか?


「なるほど、そのギャップを見つけたってことですね。」


「そうだ、お使い頼んでたけどちゃんと買えた?」


「え~っと、たこ焼きは二人分買えたんですけど、


焼きそばが売り切れてて、リンゴ飴はラスワンでした。


焼きそばの代わりにフランクフルト買ってきましたよ。


こっちの方が食べ歩きに向いているだろうし丁度いいかなって。」


すげぇ、ハプニングが代替案がすぐ出てくるなんて


勉強ができるだけじゃなくて、しっかり頭いいんだな。


「ありがと。」


そうして二人、屋台飯を食べながら目的のスポットまで歩を進める。



「到着。どうよ、周りが暗いからよく見えるだろ。」


満天の星空を見ながらそう言う。


「綺麗....」


ふふっ。気に入ってもらえてよかった。


そのまま視線を落とし、


一号が右手に持ったリンゴ飴が目に付く


「そうだ、リンゴ飴一口貰ってもいいか?」


返事がない。多分いいんだろう。


ただ、そのリンゴ飴には齧った跡があった。


まぁ、僕と一号の中だこのくらいなら平気だろう。


「いただきます。」


そうしてガブリとリンゴ飴を一齧り。


ビクッとリンゴ飴が動き上を見る。


「一号、顔真っ赤っかだぞ。リンゴよりも。」


「先輩のバカー。」


「「「ドーーン!!!」」」

「ベッチーン」


花火にかき消されはしたが、そのビンタは僕の頬にジャストミート。


僕の頬もリンゴ色。

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