第8話 一号、ライダーになる

食事を食べ進めながら


「それで一号、なんで夏休みしょっぱなからこっち来たんだ?


それも朝の早い時間に。待ち合わせはなかったよな?」


朝早くから一号に(安眠妨害されたのだから)当然の質問を投げかける。


それに対して、


「わたし、自転車というものに乗ったことがなくて。


自転車を買うお金はお父さんから渡されたんですけど。


やっぱり、初めてだから先輩と一緒が良いなって。」


と恥ずかしそうにいう一号。


いや全然恥ずかしいこと言ってないからねと心の声で突っ込みを入れ、口では、


「ごちそうさま。おいしかった。」


と言って食器を流しまでもっていき、


「一号、着替えてくるからそこで待っといて。」


自室へと向かう。


クローゼットを開けるとパパンが買ってきたり、


仕事でもらってきたりした服がところ狭しと詰まっている。


今日は自転車に乗っていくことになるだろうから。


「白のTシャツ、水色のパラシュートパンツ、羽織ものはステッチ入りの青いジャケットで。」


動きやすさ重視の服装にしよう。


パジャマはパパっと脱ぎ捨てて、ささっと着替え、脱いだものはを洗濯籠にいれ


リビングへと戻る。


「一号行くぞ。」


「もうですか。」


せっかく人が急いで準備したってのに『もうですか。』ってなんだよ。


まぁ怒んないけどさ。


「母さん、おばさんに連絡しといて。


『娘さん借ります。夜10:00までには返しますので』って。」


イタズラはさせてもらおう。


「オッケー、母さんにまっかせなさーい!!」


ママンに協力を取り付けられた僕は、


一号の手を掴んで玄関へと向かう


「えっ、えええ!!」


無視だ。無視。


そのまま家の駐車場に止めてある自転車を取り、


二人でサイクルショップまで徒歩で向かう。



「着いたー。先輩暑かったですよ。もう。


ジュースおごってください。」


まぁ、炎天下で2km弱歩いているんだからご褒美としては妥当か。


「仕方ねえな、カル〇スでいいか?」


「はい、カルピスで...ってうぇぇぇ!


あの先輩が優しいだと!?」


「失礼な奴だな。なら両方とも僕一人で飲む。」


「嘘ですって。先輩が優しいのはわたしが一番知ってますから。


ちゃんと私の好きなもの覚えてくれてて、合わせてくれてるし。」


それに・・・。最後の方はぼそぼそ言って聞き取れなかったが別にいいだろう。


それにしても、


「たった3か月で一番しってるねぇ。


失礼なだけじゃなくて傲慢かぁ。」


「失礼なのは認めますけど、傲慢ではないですよ。」


「失礼なのは認めるんかい。」


とまぁ、一通り茶番は終わり涼しい店内へと入る。


そして一時間程かけてああでもないこうでもないと自転車を選び、


一号の初号機が決まった。


白いクロスバイク。ヘルメットの色は赤だ。



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