第7話 マダオ_まるでダメな乙女
悶々とした夜が明け、両親の勧めで眠りにつき、
重みを感じて再び目を覚ました今、目の前にはありえない光景があった。
「はっ?」
一号が僕のベッドの横の床に座り、上半身は僕の脚にのしかかっていた。
上手く説明できないが、僕、別に命に別状はありませんが?
と言えば伝わるだろうか。
そんな感じである。とにかく重いのでどかす。
「一号、起きろ。いたずらしちゃうぞ。」
びくん。一号の耳が動いたのを僕は見逃さなかった。
なのに、こいつときたらバレていないと思ってタヌキ寝入りを続けている。
ははーん。さてはこいつイタズラされたいドМだな。
よし、せっかくだ、こいつが思っていないようなイタズラをしてやろう。
耳元に顔を近づけて、
「本当に寝てるのか?」
ふっふっふ、顔が赤くなってきてる。
これでも演劇部に助っ人を頼まれるぐらいには(両親譲りの)容姿、声、演技力があるのがこの僕だ。
イケボの無駄遣いしてやるぜ。
「なら、キスしちゃうぜ。お・ひ・め・さ・ま。」
うわぁ、こいつちょろすぎるだろ。
顔真っ赤だよ。
まるで(乙女にゆでだこというのはどうかと思ったので)リンゴだ。名前は苺なのにな。
「ん~//」
悶絶してやがる。
ざまぁ。人の脚を枕代わりにした罰だ。
ただ、少し飽きてきたので終わらせるとしよう。
親指の腹で中指をホールドして思いっきり力をこめ、
一号の額の近くに持っていく。
そして、
「バッチーン」
本気のデコピンを一発お見舞いしてやった。
「ふぎゃー!!」
その日の朝(と言っても10:00前)、この家にマダオ_まるでダメな乙女の絶叫が響きわたる。
無事目的も達成し、僕は最高の朝を迎えることができた。
そして、額をさすっている一号と一緒にリビングまで降りると母さんが一言。
「まぁ、苺ちゃんこっぴどくやられたわねえ。
指の跡がくっきり残っているじゃない。
苺ちゃん、もし治らなかったら廻あげちゃうから安心してね。」
なに言っとんじゃ。息子をそんな簡単にあげるなよ。
やっぱりママンとおばさんは同類だ。
「・・・はい//」
一号も喜ぶんじゃあない。
もし家族だったらこれDVだからね。
もう、この人たち嫌ぁ。
最高の気分も台無しで、テンションの乱高下でもう疲れた。
「もっかい寝るか。」
すたすたと自室に戻ろうとする僕だったが女性二人に力尽くで椅子に座らせられ
「さあごはんにしましょうか。」
「はい、お義母さん。」
私はいま猛烈に葛藤している。
(父よ、父よ、なぜ私に筋肉を与えてくれなかったのですか。父よー。)
こうして僕の一日は始まった。
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