第5話 久繰 廻はくるまれる

 本日2度目の気絶から目を覚ますと暗かった…暗かった!!


「やっべ、門限過ぎてんじゃん。すみませんお邪魔しました。」

 

それでも悲劇は終わらない。


寝起き、焦り、天然無自覚系後輩、不幸にも条件が揃ってしまったのだ。


ラッキースケベの。勢いよく起き上がる俺、迫りくる黒い塊。


そう、一号がソファーに座って気絶した僕に膝枕をしてくれていたのだ。


つまり、黒い塊及び、暗闇の正体はブレザー姿の後輩の胸とその影だった。


「とーまーれー」

 

突如流れる今日の出来事のフラッシュバック、スローモーションになる視界。


何とかあと2,3cmのとこで踏みとどまった。


「あっ」

 

そう、ソファはそんなに、具体的には上で暴れても平気なほどのバランスはない。


ソファから落ちる僕、僕が頭をうたないようにと僕の頭の下に手を差し込もうとする一号。


余計な人の良さがゆえに起こった悲劇。


「ムギュッ。」

 

僕にふわふわの衝撃が訪れる。


回避しようとしなければまだましだったというのに。


僕が下敷きになってそこに一号が覆いかぶさり、僕の頭を抱え込む格好となっている。


しかもこの後輩身長が175cm、僕よりも10cmちょっと大きい。


つまり、ソファーからの落下、身長差、僕の頭がある位置は後輩の胸。


「んん//」


気まずい。一号を女として見ていなかったがためにとても気まずい。


そんな時、ガチャン。玄関があいて人が入ってくる。


なんだ!足音からして人数は三人。


ガタイのいい男が一人混じっている。空き巣か!?


ヤバい。こっちに向かってきている。


早く立ち上がらなきゃ。


テンパっていた僕は横に転がる、ではなく押しのけるという選択をとってしまった。


足音が扉の前で止まる。


まずい、もう入ってくる、まだ立ち上がれないってのに、


「ただいまあ。」


「「お邪魔しまーす」」


 扉が開いて見えたのは、おばさん、パパン、ママンだった。


「「「お邪魔しました。ごゆっくり。」」」

 

ふう、空き巣じゃなかった。慌てなくてもよかったじゃん。



ん?なんでお邪魔しましたなんだ?だって僕らは・・・。


何やってんだオレエエ。オワタ/(^o^)\。


恐る恐る一号の方を見る。


「…先輩のエッチ。他の女の子にしちゃダメですよ。」

 

しねえよ。それよりもいっそ殴れ、馬乗りになってタコ殴りにしろよ。


じゃないと罪悪感で死んでしまうぞ。顔を赤らめるなぁ。


「先輩、ねえ先輩。聞いてます。」

 

やめろ、やめてくれ。


何事もなかったように話を進めるんじゃない。


その後、一号が怒っていなく、


擁護してくれたため事なきをえた。ただ、


「どう、うちの子もらってく?」

 

料理のおすそ分けのノリで娘をやろうとするおばさん。


「さすが、私たちの息子。毎日がハプニングね。ね、あ・な・た。」


「君に似てかわいらしく育ってるから、許されるのさ。」


「いえいえ、あなたに似てハンサムだからよ。」


息子の不祥事を前に、人様のいえでイチャイチャする両親。


「坊主、娘を泣かせたらぶっ殺すからな。」

 

娘LOVEな親父さん。


この中で一番まともなのがさっきまで殴り合っていた親父さんっておかしいだろ。


まぁ、とにかく僕は今日もなんとか生き延びた。助かったのだ。


そして、おばさんとママンが料理を作り、パパンと親父さんは酒を飲みながら仕事の愚痴を言いながら夕食を待ち、出てきた料理を食べて今日はお開きとなった。


ただ、帰り際に一号が


「先輩、返事遅くなりましたが、私も一緒にいっていいですか?自転車旅に。」

 

と言い、それにおばさんが


「きゃあ、新婚旅行かしら。いいわねえ。」

 

と茶化し、親父さんが怒り狂って僕にヘッドロック。


まあいい塩梅になってたので背負い投げを決め


「「一本」」

 

両親がシンクロ。騒がしい幕引きとなった。

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