第3話 久繰 廻の頭上を星が回る
嫌な予感は的中したそれも致命的なまでに。一号の親父さんが玄関で待機していたのだ。
それだけでなんで致命的かって?
この親父さんが『娘は誰にもやらん。』が口癖の娘大好き親父(しかもその辺の野生のおじさんとはわけが違う。柔道の有段者)だからだ。なので、
「おい、久繰の坊主。苺に何してるんだ。あぁん(# ゚Д゚)」
と、このように両手を広げ、メンチを切って、完全に戦闘態勢に入っているのだ。しかも、すり足でにじり寄ってくるから隙もない。
ただ、ここで引いたら男じゃねえ。僕ぁやるぜ。っとその前に、
「(さすがに親御さんの前で一号呼びはできないので)苺もう家着いたぞ。」
重りを下す。今だまったく動かないので文字通り、肩の荷,,,も降り。体が軽くなる。そして、その場で数回、軽くジャンプして慣らし手招きしながら言う。
「かかって来いよオッサン。高校生に勝てると思うなよ。」
それに対して親父さんも
「そっちこそ、武術の心得もない若造が。若さだけで勝てると思うなよ。」
こうして僕と親父さんのー男の戦いが始まった。
まずは僕が先行を取った。肩の力を抜いてとにかく距離を詰めることを意識する。
しかし親父さんとて馬鹿じゃない。冷静に僕が出してくる手でも足でもを見極めようとしている。
絶対に掴んでくるはずだという確信があった。だから、
「ヤクザキーック!」
ただの助走をつけただけの前蹴りを放つ。それを親父さんが掴む。それでも僕の勢いは止まらない。掴まれた右足を軸にそのまま逆上がりの要領で親父さんの背後空中をとった。そのまま
「チェーストー!!」
左膝を背中にズドン。キマったぜ。そうドヤ顔を決めたのも束の間。僕の視界は傾いていく。
そして、僕のおでこと親父さんの後頭部がドッスンコ。蟻さんもびっくりの勢いで衝突した僕らの頭上を星が回る。
最後までガッツで放さなかった親父さんの抵抗により今回の戦いに勝者はいなかった。最後まで立っていたのは一号ただ一人。
こうして戦いの幕は閉じた。
おばさんが帰ってくるまでの5分間、三人を太陽が無情にも照り付け、その晩の風呂が日焼けに染みて悲鳴をあげたのはまた別のお話。
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