第四話
夕暮れの空が血のように赤く染まるなか、
と。
約、2メートルのフルプレートアーマーが、振るっている
が――斬り結んでいた。
心地よい五月の風が、吹きすます。しかし、街路は廃れているため、埃が舞い上がっていた。
甚助は呼吸を整え、瞳に殺意が宿り光。人斬り包丁と独自の呪術と剣術を持ってし、赤銅の戦士と相まみえていた。
ヘルメットのバイザーの狭い隙間から、冷たい殺気を放ち。鎧の一部は赤々と燃え盛る炎に覆われ。手にしている、クラゼヴォ・モルの刃は、炎そのものと化していた。
戦士も、また。独自の魔術と剣技で、甚助と渡り合っていた。
それを保冷バッグは、冷ややかに見ていた。
互いの距離が縮まると先に攻撃を仕掛けたのは、戦士。クラゼヴォ・モルが空を裂くように振り下ろされた。
持ち主を守るため、無数の人斬り包丁が出現――する。
一列に並んで盾の役目を果たす包丁たちは、次々と折れていく。
「刀匠さん、よ。斬れ味、重視で、強度が、お留守になっているぜ!」
叫びながら一撃を素早く
「そう、なる。わ、な」
苦笑。
すれ違いの一太刀で。手にしている人斬り包丁は、所々が欠けていた。甚助は包丁の刃を左手中指で、弾く。
脆く、砕け散った。
「……、……」
刃が触れた箇所をひとなで。
『強敵だ。出し惜しむ、な』
周囲の空気が熱くなり、火の勢いが増していく。戦士の手元から青白い光が発生し、奇妙なシンボルが。大剣は炎を舞い、美しく、輝きながら甚助に向かって猛然と襲いかかる。
空気を震わせ、地面を焦がしながら一直線に進んでくる。熱気は尋常ではなく、周囲の建物の壁が次々と焼け落ち、揺れ動いた。
甚助は圧倒的、熱量に飲み込まれた。
アスファルトが溶岩へ。
クラゼヴォ・モルから放った炎は、超高温。辺りは焦げ臭い匂いが立ち込め、空気は灼熱の波動で揺らめいていた。
戦士は静かに立っていた。
鎧は赤く染まり、その姿は――火柱。あらゆるモノを焼き尽くし、堂々としているが。スリットから静か、しかし、力強く息を吐く音が。
刃先はまだ残り火が、燻っていた。
「殺った」
『我は、“キョウテキ”、だと。忠告した、ぞ。上を見ろ』
甚助は微笑を浮かべ。
「腕、鈍ったと思っていたけど。まだまだ捨てたもんじゃ、ないな。俺」
空中から戦場を見下ろしていた。
「ゥ、浮いて!?」
『
「……ウルカヌス」
『おまえは。並大抵のモノでは、及ばない強さがある。が』
「引く、わ」
『それでこそ、我が主』
空中から地面へ。
甚助を浮かび上がらせていたのは。フルプレートアーマーの戦士が折り砕いた、人斬り包丁の破片たち。それを一つのまとまりにした、魔法の絨毯。
静けさが戻った、ゴーストタウン。
元の姿に戻っている舗装路を足裏でなぞりながら、甚助は。
「俺のレヴェルを超えるレヴェル、だった、わ。それにして、も。ミスティック? や、レース? ってナニ」
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