第33話 翌日の集い

「うーん・・・今日は起きたくないよう・・・」

昨日の大変な出来事から一夜明けて。あれから私とルルの状態を考慮して、うららさん達は早めに帰るよう勧めてくれたけど、あんなに走り回った疲れが、一晩休んだくらいで抜けるわけはない。


・・・私、一応は女子高生だけど、日頃から運動していなければこんなものだよ? 大人になればもっと大変だって、本当なのかな・・・将来の不安が増した気がする。


そして、あの黒猫と出会ったのは土曜日。お昼過ぎから捜索を再開した昨日は日曜日。つまり今日は、同じ暦で過ごす多くの人達が苦手としている、月曜日である。学校、いつも以上に行きたくないよ・・・ぐすん。


『おはよう、ルル。朝御飯食べる? ・・・って、まだ回復してないかな。』

『んん・・・・・・あと半日・・・・・・』

うん、無理そうだね。これがよく漫画とかに出てくる起こされる側の言葉なら、どんな制裁が飛んでくるか分からないけれど、昨日あんなに頑張ってくれたんだから、仕方ない。


「シオンもおはよう。昨日はありがとうね。」

ルルにはこのまま休んでもらうとして、私はびりびりと刺激を伝えてくる水晶をぎゅっと抱きしめてから、朝の支度を始めた。



『・・・んう・・・・・・シオリ、蜂蜜はある・・・?』

『あっ、ルル! ごめん、今学校なんだ。後でうららさん達にも呼ばれてるけど、授業が終わったら急いで帰るね!』

ルルの声が頭に響いてきたのは、昼休みが終わって少し経った頃。なんとかしてあげたいけれど、今はどうしようもない。


『・・・・・・もうしばらく眠るわ。』

『う、うん・・・・・』

もしかして、これってふて寝? うちの妖精がふて寝した!? いや、昼御飯の後で眠いのは私も同じだけどね。クラス全員の前で注意されたくはないから、頑張って授業の時間を耐えよう・・・



*****



「それじゃあ詩織さん、そこに座って。」

「は、はい・・・正座のほうが良いでしょうか。」

そうしてどうにか授業を終え、一度家に帰って着替えてきた私は・・・今、うららさんの前で震えている。


「そこまでするつもりはまだ無いけど、私のことを何だと思ってるの?」

「ひいっ・・・!」

一応は笑顔なんだけど、うららさんの視線がとても恐い。これはもしかして、地雷踏んだ・・・? いや、『まだ』って言葉がやけに耳に残ったけど、結局は正座する説が濃厚だよね!?


「まあまあ、詩織さんが脅えてるから、まずは楽にしてもらおうよ。」

「このままでは、ちゃんと話も聞けませんからね。」

「あ、ありがとうございます。しんどう先輩、奥様・・・!」

そんな私を救ってくれたのは、昨日も直接的に助けてくれた、格好いい女の子・・・やっぱり年上だと発覚したのでしんどう先輩と、ルルと同じ異世界からやって来たという金髪美少女・・・改め、しんどう先輩の奥様だ。


・・・いや、ルルもいるから神社には集まれないし、自然とお二人の家に集合となったけれど、

うららさんより先に到着したところを、出迎えてくれた時の雰囲気が完全にだったので、思わず『奥様ですか?』って聞いたら、物凄く喜んでくれたからね。もうそれで押し通すしかないよね?



「・・・何か急に仲良くなってない? まあ、奥様というのは分かるけど。あまり人前に出そうとしないし。」

「えっ・・・? ああ、周りの目がすごそうですもんね。」

「うん、そういうこと。」

「こちらに来て初めて街を歩いた時は、少し困りましたね・・・」

そりゃあ、こんな金髪美少女に出会ったら、私だって二度見しそうだし、なんならそのまま時間を忘れて見惚れちゃうよ・・・!


「それよりも気になるのは『先輩』呼びなんだけど、私も何か更新されていたりするのかしら?」

「は、はい! でしたら、うらら教官と呼ばせていただきます!」


「・・・これ、殴ったらパワハラになるのかしら?」

「詩織さんが訴えれば、暴行罪とかで捕まるんじゃない?」

「そ、そんなことしませんから、口を封じたりしないでください・・・!」

「本当に私を何だと思ってるのよ。」

「ぴいっ・・・!!」

うん、何もなかった、何もなかったんだ・・・



「それじゃあ、ルル。そろそろ元気になったかな? ここにはうららさん達しかいないし、姿を見せても良いと思うけど。」

「ええ、しっかり休ませてもらったし、もう大丈夫よ。」

ルルが私の中から出てきて、きらきらとした光から妖精の姿に戻る。ついさっき、寝起きで口にたくさん蜂蜜をつけていたことは、皆には話さないでおくよ・・・


「人間はこういう場で、自己紹介をするものよね・・・私はルルティネ、シオリに助けられた異邦の妖精よ。」

うん・・・? 元気になったのは分かるけれど、いつもと少しだけ様子が違う。


「改めて、昨日はシオリを助けてくれたこと、感謝するわ。妖精が人間に頭を下げるなんて滅多にないから、覚えておいてちょうだい。」

「ルル・・・!」

もう、恥ずかしい感情が視えてるよ。私のせいなのに、慣れないことをするんだから・・・!


「それで、この場は昨日起きたことを話すためのものだったかしら。私も迂闊ではあったけれど、シオリがもうあんな目に遭わないよう、あなた達からもよく言ってもらえると助かるわ。」

「うぐうっ・・・!!」

うん、そういう場なのは確かだけどね。本題に入る前にむしろの針が一本増えた気分だよ・・・!

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