第28話 捜索開始
「それでは、あの黒猫さんにどう対応するか、緊急会議を開きたいと思います。司会、私! 出席者、ルルとシオン!」
「・・・よく分からないけれど、人間がよくやる何かを真似たいとシオリが思っているのは、何となく察したわ。」
「うぐっ・・・!」
ルルの冷静な分析が、私の心を少しだけ
・・・シオン、励ますように少しだけびりびりしてこなくてもいいんだよ?
「まあ、どうするも何も、さっきのは逃げてもう居ないわけだけど・・・
「そ、そうだよね・・・でも、今日は逃げてしまったからといって、ここに二度と現れないとは限らない! ということで、この辺をお散歩する時間を長くするのはどうかな?」
「まあ・・・また見かける可能性も無くはないと思うわ。ただ、あのお祓いが出来る人間に話したほうが、何かと早いのではなくて?」
「うっ・・・! た、確かにそうかもしれないけど、まだ借りも返していないのに、それをさらに増やすのはなあ・・・」
「それもそうね。あの人間に会うのは気が進まないの、私も同じよ。」
「あはは、そうだよね・・・って、シオンも同じかあ・・・」
シオンはお祓いで消滅の危機だったもんね。よく分かるよ、そのびりびり・・・
「というわけで、引き続きお散歩をしながら、もしあの猫さんを見付けたら、今度は姿を消したりして追いかけよう!」
「・・・結局、適当に歩き回るということね。よく話す人間に言われていた、体力をつけるために動くという意味では、良いのではないかしら。」
「う、うん・・・おかしいなあ、何だか涙が出てきそうだよ。」
そうだ、これは体力作りにも役立つ、一石二鳥のやり方だからね。そう自分に言い聞かせて歩いてゆくよ?
野を越え山・・・は近くにないから、公園にある坂道を上り、ルルに私の中へ入ってもらい、住宅街のほうまで歩いてみる。
・・・うん、すごくいい運動になったね。
『それで、さっきのやつについては、何か分かったのかしら?』
『何の手がかりも得られませんでした・・・ルルも分かってるでしょ・・・?』
思わず、一部で流行している言葉を叫んでしまいそうになったよ・・・危ない危ない。
『まあ、なるべくしてそうなったとしか言えないわね。』
『うわあああん・・・!』
勘とか幸運とかチート能力で、訳の分からない速さで問題を解決するような物語の主人公ではないんだよ、私は・・・
『もう・・・泣きそうな感情を振り撒くくらいなら、もっと考えて行動しなさいな・・・妖精が言うようなことでもないけれど。
それより、覚えのある大きな気配が近付いてきてるわよ。』
『えっ・・・? って、うららさんだあ!』
すぐに駆け寄って敬礼! じゃないけれど、色々とお世話になったし挨拶はしておかないとね。
「あら、詩織さん? こんなところで会うなんて奇遇ね。」
「は、はい・・・! 私、この辺りをよくお散歩してまして。」
「あら、そう・・・? それなら、初めて会った時に見覚えがあってもおかしくないけれど。」
「あっ! ふ、普段はあっちの公園が多いんですけど、今日はこの辺まで・・・ちょっと運動不足で。」
「ふうん・・・」
「・・・・・・」
な、何か疑いの目を向けられた気がする! そ、そうだ、こんな時は先手を打たないと・・・!
「と、ところで、うららさんもよくこの辺に来るんですか?」
「そうね・・・あの公園には坂の上に小さなお社があって、少し関わりがあるから時々お参りしているわ。うちの神社からも歩いて来られる距離だしね。」
「ええっ! そうだったんですか・・・!」
うん、一度は挨拶に行こうとか考えておいて、何てことを口走ってるんだろうね、私は・・・いや、神社の名前と大体の場所くらいは聞いていたんだよ? 地図をちゃんと検索していなかっただけで。
「神社にお参りしてルルがどうなるか、気がかりなところではあるんですが、いつかご挨拶したいと思います。」
「ええ、最初は肌が合わなくても、だんだんと慣れてくるような例もあるから、無理はしないでね。」
「は、はい・・・!」
・・・どうやら、私は生き残ったらしい。無事に別れの挨拶をして、うららさんが公園のほうへと向かってゆくのを見送る。最後に話してくれた例が気になりすぎるけれど、深く聞くのも何か恐いよね・・・
『とりあえず、神社の場所は分かったから、ルルも覚えておくと良いかもね。』
『ええ、危険地帯としてね・・・』
うん、うららさんに聞かれたら消し飛ばされそうだけど、大事な情報をルルと共有できた。
『それじゃあ、すごく疲れたから今日は帰ろうか。』
『ええ、それが良いと思うわ。』
黒猫さんの捜索は、また明日・・・いつか見付けられるといいな。
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