第2話 異世界の妖精
「えっと・・・色々と聞きたいことはあるけど、まずルルは、どうして消えそうになってたの?」
「そうねえ・・・どこから話したものかしら。
まずは興味本位で、勇者と魔王が戦う場所の近くに行ってしまったんだけど・・・」
「ふえっ・・・・・・?」
待って待って、妖精の時点で十分にファンタジーだけど、物凄く穏やかじゃない単語が出てきたよ。私の知らないところで、世界の命運をかけた決戦とか起きてないよね?
「さすがに目の前に行くのは危ないと思ったから、お城の上で魔力のぶつかり合いを感知してたのよ。
そうしたら、急に空が割れてね・・・」
「え、え、え・・・?」
ごめん、ルル。全然付いていけないよ。やっぱり今も夢の中じゃないよね・・・
「それが私のそばだったから、吸い込まれてしまったのよ。そうしてこの辺りへ飛ばされたんだと思うけど、何があるか分からないから、すぐに自分を休眠状態にしたの。
もしも自分に合う場所へ流れ着けたら、目覚めるようにね。それからシオリと出会うまで、ずっと眠っていたわ。」
「え、ええと・・・・・・それはもしかして、ルルは異世界から来たってこと?」
「異世界・・・いい言葉ね。確かに、ここは私が元いた場所と環境が違うし、ずっと目覚めなかったのだから、そういうことなのでしょうね。」
「そっかあ・・・」
物語の中で『異世界』はよく出てくる言葉だから、イメージはしやすいけれど、実際にそこから来た人・・・ルルの場合は妖精か・・・に出会った時に、どうすれば良いのか分からない。
「そうだ。ルルが眠っていたのって、どれくらいの時間なの?」
「うーん・・・意識も無かったから覚えていないけれど、休眠状態になってなお消えかけるくらいだから、すごく長い間かしら。おそらく人間の生きる時間よりもずっと・・・ね。」
「ええええっ!! じゃあルルって、すっごく年上?」
「うん? そうだと思うけど、妖精と人間の感覚はきっと違うわよ。」
「それなら呼び捨てじゃなくて、『ルルさん』とか・・・」
「止めてちょうだい。距離を置かれたみたいで淋しいわ。」
「あっ、ごめん・・・」
私のそばにルルが寄ってきて、頬にこつんと頭を当ててくる。すっごく可愛い・・・! じゃなくて、これがルルの距離感なんだろうな。それに私達は・・・・・・
「ねえ、ルルってすごく長生きなんだよね。それが、私が死んだら一緒に消えちゃうって・・・」
「気にしなくていいのよ。元々、シオリに出会えなければ今頃消えていたでしょうし、最期にこんな相手と時間を過ごすのも、悪くないわ。」
「あ、ありがとう。私、出来るだけ長生きするね。それからルルがこっちの世界を楽しめるように・・・」
「ふふ、無理しないで良いけど、気持ちは嬉しいわ。そういえば・・・さっきまで私はシオリの力をもらっていたけれど、体に悪い影響は出ていないかしら?」
「悪い影響? うーん・・・特に思い当たることは・・・あっ!」
そういえば一つあったよ、違和感が。
「昨日、いつもよりお腹が空いた気がするんだけど、それが影響なのかな?」
「ああ、きっとそうね。私がもらった分、シオリが足りないと感じてしまったのよ。」
「そうだったんだ・・・」
・・・・・・あれ? お腹が空くって・・・これはもしや、ダイエットになるんじゃないかな。
「・・・ルル。これからも私のカロリー、たくさん吸収していいからね?」
「シオリ・・・なんで嬉しそうなの? それに何か
・・・疑いの目で私を見始めたルルへ事情を説明するのに、しばらくかかった。
「はあ・・・人間のそういうところは分からないわね。まあ、私が力をもらっても問題が無いのなら良いわ。でも、シオリが弱るようなことがあったらダメよ?」
「う、うん。気を付けるね・・・」
人間は太りすぎても体に良くないと言われるけれど、話がややこしくなりそうだから、今は止めておこう。
あれ、カロリーのことを考えていたら、お腹が空いてきた・・・って、それはそうだよ。朝起きてから、ずっと話をしているんだから。
「そろそろ朝御飯にしようと思うけど・・・ルルって、何を食べるの?」
「そうね・・・さっきまでしていたように、力をもらえば大丈夫だけど、シオリと繋がってる今なら、同じものを食べられるのかしら。人間の食事というのも、興味があるわね・・・」
「分かった、それじゃあルルの分も用意してくるから、ちょっと待っててね。」
「あっ、私も一緒に行くわよ・・・!」
そうしてルルがぱたぱたと付いてくる中、私は朝食を作るため台所へと向かった。
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