第13話 橋上の盗賊達1

 アルバンとリスタは先を急いだ。

 老爺からの忠告を頭の片隅に置いておくと、ふとリスタは気になってしまった。


「アルバン、この先に盗賊がいるのかな?」

「どうだろうな」

「もしも本当に盗賊がいても、やり過ぎちゃダメだよ」

「分かっている。俺をなんだと思っているんだ」


 アルバンはリスタの忠告が気に入らなかった。

 ムッとした表情を浮かべると、ズカズカと先を行ってしまう。


「あっ、待ってよアルバン! もう、怒らないでよ。ただの冗談でしょ?」

「……分かっている」

「分かってる!? ううっ、一体何百年旅して……うわぁ!」


 リスタはアルバンの背中にぶつかってしまった。

 鼻先がぶつかり、反射的に押さえてしまう。

 急に立ち止まったアルバンにリスタは疑問を抱くと、顔を上げて視線の先を睨んだ。


「あれ、川があるね。橋の上、誰かいる?」

「数は十人だな。全員武装している」


 アルバンとリスタの視界の先、そこにはそこまで幅の無い川が流れていた。

 上には一本の橋。木製のようで、かなり年季が入っている。

 おまけに劣化しているようで、所々の柵が無いので、かなり危険だった。


「十人も!? うーん、武装はナイフが二人、剣が二人、斧が一人と、モーニングスターが一人、後は森の中に弓とボウガンが一人ずつ、魔法使いはいないけど、気配を消している伏兵が二人。人数に対して、種類は少なめだね」

「油断はするなよ」

「分かってるよ。倒さないと絡まれちゃうもんね」


 アルバンとリスタは好戦的だった。

 盗賊の姿を見かけ、視線は無いものの、明らかな殺気を感じ取ると、まずは遠距離から伏兵を全員倒すことにする。


「俺が正面を開ける。その間に頼んだぞ」

「うん。【白璽】:《サザン・クロスショック》!」


 リスタは指先に三つの珠を挟み込んだ。

 真っ白な珠だが、ビリビリと静電気を放っている。


「行けっ!」


 放り投げると、森の中へと消えて行った。

 生体反応を頼りに、弓とボウガン、伏兵を全員仕留めに行く。


「「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」」


 ものの数秒で断末魔が上がった。

 まるで雷に打たれたような衝撃が走ると、盗賊全員に駆け巡る。


「な、なんだなんだ!?」

「おいおい、ちょっと待て」

「敵か!? 何処に敵がいるんだ!?」

「黙れ。全員オデが始末して……ん!?」


 混乱してパニックに陥っている盗賊達。

 その姿を目視で確認すると、アルバンは一切の武器を持たずに橋の前にやって来る。


 後方でモーニングスターを振り回す男性。

 かなりの巨漢で脂肪が服からはみ出ている。

 かなり動き難そうで、ドスンドスンと音を立てて近付いてきた。


「お前、何者。オデ、返答次第で、お前、殺す!」

「黙れ。【黒葬】:《ヘルズ・ストライク》!」


 アルバンは待ってすらあげなかった。

 近付いてきた瞬間、渾身の魔法を攻撃をぶっ放す。

 黒い巨大な塊がモーニングスターの男性を飲み込むと、その後ろに待機していたナイフと剣を一人ずつ潰した。


「「「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」


 男性達の大絶叫が上がってしまう。

 耳を劈き、森の中に隠れていた小鳥達が一斉に飛び立つ。


「な、なんだお前!?」

「まさか魔術師か。くそっ、俺達で仕留めるぞ」

「……やってみろ」


 アルバンは終始余裕な態度を見せた。

 ナイフ使いの男性が震える足をガクガクさせながら突っ込んでくる。

 これなら魔法を使う必要もない。アルバンはナイフが触れる間際で手首を掴むと、柔術の要領で放り投げた。


「怯える奴がナイフなんてもの持つな」

「はっ……」


 ナイフ使いの男性は軽く一捻りされてしまう。

 地面に背中を叩き付けると、受け身も取れずに痛みで悶絶する。

 声にでもできない大絶叫が口から零れ落ちると、アルバンは次の相手を凝視する。


「さぁ次だ。掛かって来い」

「な、なんだよ、こいつ……」

「急に現れてなんだ、お前は! ここは俺達に縄張りだぞ!」


 残された剣使いと斧使いは罵詈雑言を浴びせ、アルバンを非難した。

 けれど自分達が盗賊であることをひけらかすような発言に、アルバンは興味の欠片も無い。


「どうでもいい。とっとと来い」


 アルバンは盗賊達を逆に煽って挑発する。

 完全にアルバンのペースへと持ち込むと、盗賊達は負けると分かっている戦いに身を投じる羽目となってしまった。


「ふん。実力差が分かっていて来るのか」

「んなもん知るか。死ねっ!」

「死んでやる気は無いが……これは楽しくなりそうだ」


 アルバンは不気味な笑みを浮かべた。

 もはや盗賊達のことを遊び相手程度にしか考えていない。

 あまりにも余裕がある状況にアルバンは愉悦を感じると、盗賊達を相手取った。

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