第46話 あの日の真実

「これから俺が良いと判断するまで、絶対にオーガの力は使うな」


 と叔父さんに言われてしまった。

 なんでも、俺は困ったらすぐにオーガの力を使う癖があるらしい。


 自覚はある。


「そのうえで毎日ランニングと水泳。あと薪割りをしろ」


「朝のモンスター狩りは?」


「しばらくはいい。マーレとキューネちゃんにやらせる」


「キューネはまだしも、マーレも?」


「気づいていないだろうが、あのふたり結構腕を上げたぞ。ギルドで経験を積んだからだろうな。ふたりで組めば、オーガの力のない今のお前より強い」


「そ、そうなんだ」


 なんだか、複雑な気分。

 いやいや、素直に喜ぶべきか。


「で、実戦訓練は?」


「まずは基礎体力をつけろ。怠け者のお前の体を鍛えるんだ」


「え」


「嫌ならやらなくていいが?」


 わかったよ。

 まずはコツコツと、ねえ。

 面倒くさいけど、泳ぐのは好きだし、頑張るしかない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 それから2ヶ月。

 日課のランニングを終えると、ちょうどキューネとマーレが朝の素材収集から戻ってきていた。


「わー、ムウってば、腕太くなったんじゃない?」


 キューネが腕に触れてくる。


「そうかな?」


「うん。なんだか、男らしくなったね。えぇ!? あんなに薄かった胸におっぱいが!!」


「胸筋ね」


 せっかくなので、キューネも交えて朝ごはんを食べる。

 その後、


「ムウ、今日から実戦訓練だ」


 突然、叔父さんがそう告げた。




 家の外に出て、相対する。


「だいぶ筋肉がついてきただろ」


「うん」


「筋肉は重要だ。手で触れずとも、己の肉体の真経穴を刺激することができる」


「へえ」


「ずっと前にも教えてやったのだがな」


「そうだっけ」


 たぶん、聞き流していたんだろうなあ。

 筋トレとか面倒くさい。必要ない。とか、そんな理由で。


「そう言えば、俺が戦ったあの金髪も、真経穴をズラしたとか言ってたな。そういうこともできるの?」


「まあな。急所攻撃への耐性もあげられる。まあ、向こうも真経穴を使わない限り、真経穴ズラしなんて意味はないが」


「へえ」


「ちゃんと覚えておけば、相応の策を練って勝てたのに。お前の敗因は、ビックリするばかりで冷静さを欠いたことだな」


「……まるで側で見ていたかのように言うじゃん」


「……」


 マーレが事細か教えたのかな。

 なんか気になってきた。


「そういえばさ、俺がマスターギルドの話をしたあと、いきなり薬の素材もってこいって命令してきたよね」


「あぁ」


「あのとき集めた『百年草』とかコカトリスの爪とかって、ずいぶん前にも取ってきた記憶がある」


「そうか」


「確かあのときは……『友人のおばあさんの望みで、若返りの薬を作ってやりたい』とか言ってたよね」


「……」


「叔父さん、あの日なにしてたの?」


「お前のような勘のいいガキは嫌いだ」


「うわあああああ!!!! じゃあまさか!! まさか!!」


 あのときの金髪は、若返った叔父さん!?

 スッと腑に落ちた。マーレをナンパしたくせに、やけにテンション低かったというか、本気さが伝わってこなかったというか。

 なんでもいいから俺に因縁をつけて、戦いたかっただけってこと!?


「どうしてそんなことを!!」


「ハッキリさせてやったんだ。マスターギルドに挑むのか、村でのんびり暮らすのか。感謝してほしいな」


「そ、それでわざわざ、あんな芝居を!? わざわざ若返ってまで!? 普通に勝負すればよかったじゃん」


「最初から俺だとわかってたら、お前は本気で戦わなかっただろう。最悪、『叔父さんに負けるのはしょうがないか』とか言い訳かましていたかもしれん。それじゃ意味がない」


「うっ……」


「お前の考えることなどすべてお見通しだ」


 くっそ〜、本当にムカつく。

 手のひらの上で踊らされていた感、たまらなくムカつく。


 だから叔父さんは嫌いなんだよ。


「まさか、マーレもグル?」


「なかなか演技力のある子だ」


「くっ!!」


「しかし、意外と楽しかったな。女の子をナンパするなんて何年ぶりだろうか。俺があと35歳若かったら、本気でマーレを口説いていただろうな」


「気持ち悪いこと抜かすな!!」


「ははは」


 あ〜、気分が悪い。

 世界のすべてが敵になったような気になる。


「安心しろ。若返らなくても、お前には負けん」


「あっそ!!」


「そうふてくされるな」


「ふてくされてない!!」


「ふふっ」


 なに笑ってんだか。

 決めた、絶対に叔父さんを超える。


 過去にマスターギルドの1位を倒したからなんだってんだ。

 いつか必ずぶん殴ってやる!!






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※応援よろしくお願いしますっ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る