第27話 ルナク
翌日の夕方、キューネとマーレを連れて指定された一本杉の丘へ向かった。
誰かいる。5人ほど。
イカラビの連中か?
中央にいるメガネの男がイヤミったらしく頬を上げた。
「お待ちしていましたよ、サマチアの方々。私はリーダーのルナク。」
キューネが答える。
「この街のことは私たちでどうにかします」
「それを決めるための決闘でしょう? まさか受けないわけないですよねえ? 地元ギルドのプライドがあるのなら」
理解できないな。
戦いから逃げることのなにがダメなのか。
心の問題? 地元民からの目? まったくわからない。
「言われなくても受けるわよ。でも、リーダーはいま事件に巻き込まれて大変なの。だから延期してほしいの」
「知っていますよ。娘さんがいなくなったのでしょう?」
「え、なんで……」
「何故って。……リナ」
一本杉の陰から、小さな女の子が現れた。
てっぺんだけ黒色の、特徴できなピンクの髪。
生意気そうなツラ。
間違いない、リナリオンだ。
「リナリオンちゃん!? どうして!? ド、ドラゴリオンさんが心配してるよ!!」
やはり、リナリオンはルナクと繋がっていたか。
「リナには僕から頼んだんですよ。責任感のあるお父さんがいると、話がスムーズに進まないからね」
「ど、どういう……」
「話は戻りますが、リーダーのドラゴリオンさんがいないのなら代理を立てれば良い。リーダーよりも強い方が、いるのだから」
ルナクと視線が重なった。
ナナルの忠告通り、ハナっから狙いはこっちか。
確かに、ドラゴリオンなら、『頼りっきりは良くない』とか言い出して自分で戦いそうではある。
それに、こうして自分がドラゴリオンの代わりに交渉についていくこともなかった。
すべては、邪魔なリーダーを引っ込めて自分を引っ張り出すため。
「まどろっこしいな。直接家に暮ればいいのに、こんな大げさなことを」
「決闘は、公式の戦闘ですから。大勢の人間が立ち会っている状況で、勝敗がそれぞれの街に記録されるので」
「あっそ。悪いけど、自分は戦わないよ。ギルドの人間じゃないし」
「ギルドの人間じゃない?」
「ていうか、功績が欲しいだけでしょ? ナナルを倒したやつを倒して、マスターギルドに入りたいとかなんとか」
「おや、話が早い」
「ならどうぞお好きに。勝ったって言いふらせばいいじゃないか」
「ほうほう、よろしいのですか?」
「構わなーー」
言い終わる直前、
「ムウ!! 大丈夫かー!!」
ドラゴリオンが、走ってやってきた。
「な、なんで!?」
「やっぱり、ギルドの一大事は放っておけないだろう。娘のことは、妻に任せてある」
「……」
「ムウ、君ばかりに任せていられない。たとえ負けようとも、今回は僕がたた……」
そう言いながら、ドラゴリオンが敵側の方を向いた。
とうぜん、気づく。いないはずの娘の存在に。
父を見て、鬼のように怒りの表情を浮かべているリナリオンに。
「な、なんでリナがここに……」
「本当に……あんたは最低の父親だよ!!」
「なっ……」
「そうやっていつもいつもギルドを優先して……ルナクさま!! もうムウなんかどうでもいい!! あいつをぶっ倒してください!!」
ルナクがため息をついた。
「まあいいでしょう。ムウは勝手に不戦勝にしろと申していることですし……軽く捻ってサマチアを取り込んでおきますか」
ドラゴリオンはまだ事態を飲み込めていない。
ここは、当初の予定通り延期にすべきだ。
ルナクが続ける。
「そうだ、特別にムウ以外の3人で挑んできていいですよ。もちろん、こちらは僕だけ。せっかくだから、『アレ』を使わないと」
アレ?
なんだアレって。
ようやくドラゴリオンが口を開いた。
「リ、リナ、こっちに戻ってきなさい」
「はあ? バカじゃないの? 私はルナク様の仲間なの!! そんなに戻って欲しいなら、ルナク様を倒してみてよ!! どーせ無理だろうけど」
「くっ」
キューネがドラゴリオンの肩を叩く。
「こうなったら、やりましょう。向こうのリーダーを倒して、リナリオンちゃんとお話するんです。……マーレも、いいよね?」
「で、でも相手はギルドリーダーなんですよね? いくら私たち3人がかりだって、厳しいような」
「……」
「や、やります!! がんばります!!」
「うん、よろしい。ほら、ドラゴリオンさん」
顔面蒼白のまま、ドラゴリオンが頷いた。
「そ、そうだね。まずはギルドのリーダーとしての務めを果たさないと」
ドラゴリオンとリナリオンの確執。
その原因、理由、闇、根底がひしひしと伝わってくる。
胸騒ぎが、止まらない。
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※あとがき
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