第22話 サマチア、またピンチ!!

「キューネ、頼む」


「うん!! スキル発動!! 身体強化!!」


 おお、力がみるみる湧き上がる。

 元気いっぱい、というかまるで自分が自分でないみたいだ。


「よーし」


 崖の上、襲いかかる巨大鳥コカトリスへ突っ込み、腹に拳をめり込ませる。

 下腹部の真経穴を刺激し、強制的に糞を出させた。

 まったく、こんなもんを取ってこいだなんて、叔父さんも本当に人使いが荒い。


 あ〜、くさ。


 コカトリスが逃げたあと、目当ての『品』の一部を短剣ですくって、麻袋に入れた。

 あとは崖から降りるだけだ。オーガの血を目覚めさせれば、キューネを抱えて落ちたって安全に着地できる。


「おつかれ、キューネ」


「もう!! 私のスキルを眠気覚ましに使うのやめてよ。明日も夜ふかししたら叔父さんにチクるからね」


「ごめんごめん。さ、帰ろう」


 朝の仕事を終えて、村に戻る。

 キューネと別れて家を目指すと、玄関前に馬車が停まっていた。

 叔父さんの客だろうか。


 馬車から誰かが降りてくる。

 青い髪の、メガネをかけた男だった。


「君がムウか」


「誰?」


「家を訪ねたら留守だと聞いて、待っていた。ギルド管理委員会の者だ」


「で?」


「ここ数日、君のギルドについて調べたよ」


 誰のギルドだって?

 男は手に持った資料を確認しながら、続けた。


「こなしたクエストはすべて一番下のCランクかBランク。魔石や素材も収集せず、おまけに人数も規定の5人以下。……ハッキリ言って大問題だ。このままではサマチアの総生産はさらり下がるうえ、モンスターたちが過剰に繁殖、仕舞には人口減少も免れない。しかも、リーダーである君はスキルを持たないそうだね? 他のギルドの示しがつかないな」


「なんだあんた。いきなり現れてペラペラと」


「これは厳重注意だ」


「そもそも、ギルドのリーダーじゃないんだけど」


「ん?」


「ドラゴリオンさんだよ。それに、ギルドのメンバーでもない」


「ふむ、報告と違うようだ。だが君はギルドの関係者だろう?」


 うーん、まあ、もはや関係者っちゃあ、関係者か。

 メンバーというか、協力者?


「そうか。なら君から伝えておいてくれ。期限は一週間、それまでにメンバーを5人以上にし、Aランク以上の依頼を2つ以上受けること。そうすれば、今回は見過ごしてやるかもしれない」


「嫌だね。自分で言いに行きなよ」


「なら構わないさ。レベルの低い君らではどうせ無理な話だ。一応業務上、事前に忠告しなくてはならないから告げたまで。私としては、速やかに解散し、委員会から代理のギルドメンバーを派遣したいところだな」


「……」


「あぁ、それと、君がランドを倒した、というのは事実か?」


「うん」


 男がニヤリと笑った。


「ありがとう」


 なんで感謝するんだろう。

 嫌いだったのか、あいつのこと。


 男が馬車へ戻っていく。


「ねえ」


「なにか?」


「あんた、名前は?」


「サンド」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 さすがに、黙っているのは可哀想だよね。

 ってことでキューネにサンドのことを話したら、大急ぎでマーレも引き連れ街に向かうことになってしまった。


 あーあ。今日は釣りをしたかったのに。


 で、酒場でドラゴリオンと合流して、キューネがいろいろ説明したのち……。


「な、なんだってええええ!?」


 案の定、ドラゴリオンが絶叫した。


「うぅ、マズイ。管理委員会に目をつけられるとは……」


「そんなにマズイんだ」


「当たり前だよ。ギルドに関するあらゆることを管理しているのが委員会なんだ。ギルドメンバーを登録するのも、誰かが依頼を出すのも、それを僕らが受理するのも、報酬のやり取りも、税金の処理も、すべて委員会が仲介するんだ」


 なるほど、つまりお役所か。

 知らなかったな。


「もし彼らが『解散』を命じたら、僕らは二度とサマチアのギルドには入れないうえ、ギルドメンバー不信任として、過怠金などの懲罰も課される」


「へー、重いね」


「本来、ギルドに入るとは、それほどの責任を負うことなんだ。なんせ、国から認められた自警団だからね」


「ふーん」


「リーダーは僕が務めているから、スキルの有無の件は問題ないだろう。クエストのランクに関しても、いまの僕らなら問題ないはずだ」


 ランクごとの難易度の違いは不明だけど、全体のレベルは上がっていると思う。

 経験を積んで、チームワークが良くなってきているから。


「一番厄介なのはメンバーか……。あと2人も集めないとならないのかあ」


「ん? あと2人? いまって4人でしょ? ドラゴリオンさん、キューネ、マーレ、あとやる気ない残りのメンバーがいるんじゃなかった?」


「一ヶ月以上任務に参加していないと、メンバー仮登録扱いになるから」


「じゃあ、引っ張り出せばいいじゃん」


「君が川の主にした」


「川の主?」


 なんじゃそりゃ。

 誰かを川の主にした記憶なんて……あった。

 ベゲリンのことか。


 マーレの元主人だ。

 あちゃー。


「とにかく、急いでメンバーを増やさないといけない。でないと、サマチアの愉快なほのぼの軍団は解散、委員会から知らない連中がやってきて、ギルドを乗っ取られる!!」


 また乗っ取られのピンチか……。

 とにかく、メンバー増やしなら今回は出番はないだろう。


「僕はこれからあちこち掛け合ってメンバーを募集する。元メンバーにも会って交渉するつもりだ。……はぁ、今日も帰れそうにないよ」


「ドラゴリオンさん、私たちも手伝いますよ」


「あ、ありがとうキューネさん」


 なんだか大変なことになっちゃったね。

 ま、のんびり釣りでもしていよう。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※あとがき


ムウは釣りが趣味なわけではありません。

他にすることないだけです。


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