第19話 ほのぼの日常回② ギルド名

 ナナルを倒した翌日。

 いつものメンバーで祝勝会をすることになった。


 店は当然、いつもの酒場。


「それでは、私の幼馴染ムウの勝利を祝して、カンパーイ!!」


 キューネ、ドラゴリオン、マーレが杯を合わせる。

 浮かれてるなー。


 思い返してみれば、なにかを祝うってはじめての経験だ。

 キューネの誕生日ですら、大したことしてないし。


 マーレが目を潤ませた。


「わたし、信じてました。ムウさんならきっと勝てるって」


「信じちゃダメだぞムウ。マーレめ、直前まで完全に諦めていたんだからな」


「ドラゴリオンさん、それは誤解ですっ!! 諦めていたのはムウさんが来ることです!! あ、私たちきっと皆殺しにされるんだって絶望していただけです!!」


 なんだよ皆殺しって。

 ただの決闘だろうに。

 相変わらず、マーレのネガティブっぷりはよくわからない。


「けど、大丈夫でしょうか。今後また、別のギルドが乗っ取りに来るかも」


 そのときは是非とも3人でどうにかしてほしい。

 毎回毎回戦うのはしんどいから。


 キューネが問いかけてきた。


「ムウはさ、これからどうすべきだと思う? 私たちのレベルアップを図るべきか、メンバーを増やすべきか」


「んー? あ〜、名前」


「名前?」


「名前変えようよ。ここのギルドの正式団体名さ、『サマチア最強ランド軍団 ジ・アルティメイト』でしょ? 変えようよ」


「確かに……。でも意外ね。ムウのことだから名前なんてどうでもいいとか言いそうなのに」


「ダサすぎて気分悪くなる。寝る前に思い出したときなんか最悪」


「そっかあ」


 ていうか、なんでわざわざ名前なんてつけるんだろう。

 サマチアのギルド、でいいじゃん。


「ドラゴリオンさん、チギトの連中はどんな名前なの?」


「確か……チギトビューティフルガールズだったかな」


「うわ、えぐ……」


 あいつら恥ずかしくないのか。

 羞恥心ってもんがないのか。


 はい、とキューネが手を挙げた。


「じゃあさ、『無敵のサマチアギルド ムウ・ザ・ストロング』ってどう?」


「どう、じゃないよ。センスがランドと一緒」


「ラ、ランドと……」


 今度はドラゴリオンが口を開いた。


「『みんな真面目だよ!! ほのぼのサマチアギルド』はどうだろう」


「……よっぽどランドが仕切ってた頃が嫌だったんだね」


 苦労していたんだろうなあ。

 あのランドと野蛮な部下たちに囲まれていれば、しょうがないだろうけど。


 次はマーレか。

 うーんと頭を悩ませて、なかなか閃かないようだ。


「無理して考えなくてもいいよ」


「いえ、一つに絞りきれなくて……」


「そんなに思いついたの? 話してみてよ」


「はい、例えば『最強聖人ムウさんと愉快な仲間たち』とか『見よ、これぞ真経穴!! ムウさんと愉快な仲間たち』もしくは『世紀末ギルド救世主伝説 ムウさんと愉快な仲間たち』かなあと」


 どんだけ愉快なんだよ。

 ていうか愉快な仲間か? 君ら。


「ムウさんと愉快な仲間たちは絶対なんだ。やめてよ、持ち上げられすぎて鳥肌立つから」


「なら『愉快なムウさんと仲間たち』の方がいいですか?」


「勝手に愉快にしないで」


「うぅ、ごめんなさい。センスがなくて……」


 うん、マジでセンスがないと思う。

 キューネがテーブルに肘をついた。


「そういうムウはなにがいいのよ」


「そうだなあ……」


 せっかくだし、真面目に考えてみようか。

 サマチアギルド、で充分だけどさ。


 例えば……。


「月明かり、そびえる杉、忘れぬ誓いとあの想い、戦い救い競い合い、耐えぬしがらみに狂い飽き 我らサマチアギルドなり。ってのは?」











「「「だっさ〜〜!!」」」



 こうして、サマチアギルドの名前は『サマチアの愉快なほのぼの軍団』に決まりましたとさ。

 めでたしめでたし。




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※あとがき

もう1話日常回をやったら、新章に入るかもー。


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