第15話 ばーちゃん
鳥のさえずりで目が覚めた。
—???
あぁ、カズヤの家か。
結局そのまま寝てしまった。
ブランケットの中から下着を探し出し、衣服を身につける。
歯磨きに行きたいが、カズヤはまだ気持ちよさそうに寝ているから、起きてからにしよう。
私はポーチと鏡を取り出し、崩れたメイクを直した。
「あ、アイカ早いね。おはよー。」
鏡にカズヤの上半身が映った。
「おはよ、カズヤ。早く服着てね。」
「大丈夫、上がってこないから。」
そう言ってカズヤはパンツだけを身につけ、朝の一服をした。
「ねぇ、歯磨きとかしたいんだけど。」
「今一緒に下降りよ。朝メシもうできてると思うし。」
カズヤのあとについて1階に降りた。
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テーブルの上には既に2人分の朝食がセットされていた。
白米と、鮭、目玉焼きとベーコン、ほうれん草のおひたしが皿に乗っている。
「おはようございます、頂きます。」
「どうぞ。」
家族は食べた後なのだろう。お母さんは台所で洗い物をしている。
—昨日のベッドの音、聞こえてないよね…
お母さんの背中を見ながら、なんだか罪悪感にも似た複雑な気持ちになった。
食べ終わるとカズヤは玄関に出て車のエンジンをかけた。
「アイカ、もう出れる?ばーちゃんが午前中から買い物行きたいって言ってて。」
「いいよ。すぐ荷物持ってくるから、待ってて。」
私は荷物をまとめ、お母さんに挨拶をして車に乗り込んだ。
カズヤのお母さんは、ちょっと喋りにくかったな。何回か会ったら、親しくなれるんだろうか。
悠介くんは、予想に反して明るくて話しやすかったな。
ばあちゃんは、どんな感じなんだろう。
5分もしないうちに、住宅街の細い道を何度も曲がり、ばあちゃんの家についた。
家の前には、ボリュームのある白髪を紫に染め、うす紫の眼鏡をかけ、キリッと描かれた太眉、恰幅の良い体には豹柄の上着に黒いズボンという身なりの派手な高齢女性が立っている。
—マジか!!!
ばあちゃんの予想外の姿に驚きを隠しきれない。
「ばーちゃんおはよ、アイカ連れてきた。」
カズヤは車からおり、ばーちゃんに声をかけた。
親には「彼女」って紹介してたけど、ばーちゃんには「アイカ」って言ってる。ばーちゃんには私のこと普段から話してるんだろうな。
私も続けて後部座席からおり、挨拶した。
「はじめまして、和哉さんの…」
「おはようさん!
私が喋り終わる前にばーちゃんは元気のよい大声で、にこやかに返事をした。
ばーちゃんは助手席に座るなり、切り取ったカレンダーの裏面に書かれた買い物メモをカズヤに手渡した。
「
捲し立てるような早口で喋り終えたばーちゃんは、ビニール袋に入ったタッパを私にくれた。
「あ、ありがとうございます…」
私はばーちゃんの気迫に押され気味だったが、こちらから気を遣わなくてもガンガン独りで喋ってくれるばーちゃんに、少し気が楽になった。
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