第13話 ケンカのあとの

「ねぇカズヤ、なんか今日、いつもより…あっ」


ベッドに顔をすりつける私の髪が激しく乱れる。




「…アイたん、イッていい?」


「だめ…もっと奥…」



「むり、もう俺、我慢できない…」


動きを止めたカズヤは私の背中にぴったりと身体をへばりつけた。




カズヤの息があがっている。


「やばい、今日、めちゃくちゃ気持ちよかった…」

そう言ってカズヤは私の背中にほっぺを当てたままキスをする。


「ケンカの後って、燃える?」


「そうかも。」


「なんでかな?」


「わかんない、征服感??」


カズヤがMなのかSなのかよくわからない。



服を着た私達は、ベッドの中で抱き合った。

スウェットに手を入れ、柔らかくなったカズヤにいたずらする。


「もぅ。エッチだなぁ。今すぐは無理だよぉ。」


「えへへ。知ってる。」



「ねぇ、ところでさっきの話なんだけど…」


「結婚のこと?」


「うん。」





「明日さ、うちに泊まりに来ない?アイカのこと、母ちゃんに紹介したいし。」



「えっ!!マジ!?急すぎない?!」


カズヤは実家暮らしである。

急な顔合わせの提案に、私は少したじろいだ。


「いいじゃん、悠介ゆうすけも見せたいし。」


悠介は、カズヤの歳の離れた弟だ。

カズヤはいつも、中学生の悠介を、可愛い可愛いと私に自慢している。


「親は緊張するけど、悠介くんには会ってみたいわぁ。」




「あ、ちなみに悠介、人見知りだからね。」



—はい、それは想定済みです。





「アイたん、この前LEON《レオン》の2階の雑貨屋に指輪売ってたよね?可愛いって言ってたやつ。今買い物いくついでに、あれ見に行かない?」

台所でタバコをふかしながらカズヤが言った。



「えっ!行く行く!!」

私は急いで髪を整えた。



ショッピングモールに着いた私達は、早速2階に向かった。



「先にラーメン食う?」


「ラーメンばっかりじゃん。たまには違うもの食べよう?あと、先に指輪みたい。」


「じゃあ、指輪みたら蕎麦食お。」


—麺類好きだな。




雑貨屋の一角にあるアクセサリーコーナーに着き、ガラスケースに入った可愛いピンクゴールドの指輪を見つけた。

「これこれ、この前の。」


「えぇ!?ピンクぅ〜??お揃いにできないじゃん。」


「いいじゃん、ピンクでも」


「やだよぉ、じゃあ俺は色違いのにする。」


「やだぁ、おそろがいいの。じゃあピンクじゃなくてシルバーにしよ?」


「いいよ。結婚の時は、またちゃんと買うから。」

そう言ってカズヤはお揃いの指輪を買ってくれた。





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「えび天そばと、もりそばで。」

「かしこまりました。」




「えび1、もり1でーす」

威勢のいいおばちゃんの声が聞こえる。



和風なBGMの流れる店内で、カズヤは小さな小箱を開け、取り出した指輪を私の右手の薬指にはめた。



「アイカ、ずっと一緒にいようね!」


「うん!ありがと、カズヤ!」


もうちょっとロマンチックな場所で言って欲しかった感は否めないが、致し方ない。




右手に光るお揃いのリングが、いつでもカズヤと一緒だって思えて、嬉しくなった。







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