第7話 お風呂

—ピロピロリーン、お風呂が沸きました—



カズヤの膝の上に座ってテレビを見ていた私は、お湯の様子をみにいった。


「カズヤ、熱いの平気なら先入ってていいよ。」


「うん、熱い方がいい。ちょっと、アイたん、そっち見てて。着替えるから。」



…え?



とりあえず風呂と反対側を向いたが、残念ながらうちにはランドリースペースはなく、居間の中に風呂のドアがある。

暗くなったスマホの画面にカズヤのおしりがまる映りである。


お風呂のドアからちょこっとだけ顔を覗かせて、カズヤが声をかけてくる。


「覗かないでねっ!?」


うーん…

本当に恥ずかしいのか、

押すなよ押すなよ…的に言ってるのか、私には判別がつかない。



カズヤはまたドアの隙間から顔を覗かせる。

「だめだよ、覗いたらっ」



バカバカしすぎて私は吹き出した。

「はいはい、今いくね。」



さっき買ってきた桜の香りのでっかいバスボムのおかげで、水面がアワアワになっている。


「わっ、可愛い!!」

「ねぇー、なんかエロいよこれ、早くこっちきてよ〜。」

カズヤは顎までお湯につかりながらにやにやして待っている。



—チャポン—



「あっつ!!!」

私は入れかけた足を引き抜いた。


「すぐ慣れるよ。膝まで入って、ゆっくり入ればいいよ。」

カズヤが私を引っ張る。


もう一度足を伸ばす。

「あっつー!!!!よく入れるね!!」


「ねぇアイたん、ずっとそれ繰り返してていいよ。色んな意味で楽しいから。」

和哉は目の下まで風呂に浸かりながらこっちを見ている。

このやろう。馬鹿にして。



—ザバーン—


「ふぅ。熱かった!」

ようやく肩までお湯に浸かる。


手のひらについた泡を、カズヤの鼻の下につける。

「ふふっ、サンタさんみたい。」

「じゃあアイたんも。」

カズヤも私の鼻の下にひげをつける。


「ぷっ、へんなの!」

「なによ、カズヤがやったんでしょ?」

私はまわりの泡を両手いっぱいに集めてカズヤの顔につけた。

カズヤも負けじと応戦してくる。

ふたりの顔は真っ白い泡だらけになっていく。

パイ投げ競争か!!


「目にいれないでよ?」

「わかってるよ」




私たちはしばらく子どもみたいにはしゃいだ。




「アイたん、俺にのっかって。」

「うん…」


狭いお風呂で密着した私達。

カズヤは、水面の泡を掻き集めて、私の上半身も泡だらけにしていく。


「まだまだ泡立ちが足りないかなあ。」

カズヤは胸についた泡を優しく撫で回す。

 


「あ…カズヤ…待って、だめ…」

「なんで?」

「気持ちいいから…」

「じゃあ、いいじゃん。」



私はカズヤの唇を舌でなぞって誘う。

「カズヤ、チューは?」

カズヤが片手を首にまわし、舌を入れてくる。


あぁ、そうだよね。

石鹸の味。マズイ…

角度を変えるたびに、新しい泡が口に入ってくる。



マズイ…けど、やめらんない…


次第に石鹸の味は消えていった。



「立って。全部アワアワのヌルヌルにしてあげるから」

私は言われるままに立ち上がり、風呂場の電気を消した。







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