第4話 当直室

翌日。


朝起きてからカズヤはひどく具合が悪そうだった。


「ちょっと、大丈夫??」

「うん、昨日、飲みすぎちゃったみたい…頭がガンガンする…」


後からくるタイプなのだろうか。


「とりあえず、一旦仕事行こう。」


2人は車で職場に向かった。

「正面玄関はまずいから、私だけ裏口の近くの目立たない場所でおろして?」

「わかった。」


先におろしてもらった私は更衣室で制服に着替えた。ふと鏡を見ると、キスマークが首筋についていて、慌ててファンデーションを何度も塗ってカモフラージュした。


昨日のこと、思い出すとつい身体が熱くなる。今日はカズヤに会わないように過ごそう。


 

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送迎バスが続々と到着する。

「坂本さん、おはようございます」

「おぅ、おはようさん!」


「笠井さん、おはようございます!」

「いつもありがとね、おはよう。」


遠藤さんが遠くから大きな声で叫ぶ。

「井沢さーん、橋本さんデイまでお願いします。」

「はーい。」


私は外に出て、送迎バスのリフトから降りてきた橋本さんの車椅子を押しながらデイケアのフロアに向かう。


デイケアでは、理学療法士や作業療法士のもと、日帰りでリハビリを行い、高齢者の生活の質(QOL)を上げるための訓練をしている。カズヤはそんな高齢者の生活を支える介護職員のひとりだった。


広いフロアを見渡すが、カズヤの姿はない。大丈夫だろうか。



しばらくして入り口に戻ると、更衣室のほうに向かっていくカズヤの後ろ姿が見えた。



周囲を見渡して人がいないのを確認し、声をかけた。

「成瀬さん、大丈夫ですか?」

「ちょっと無理かも。主任に言って、当直室で休ませてもらうことにした。」

「そう、お大事にね。」


いつもにもましてクマがひどく、血色の悪い顔色のカズヤのことが気になったが、自分の持ち場へ戻った。



あぁ、昨日無理して飲ませなきゃよかった。

調子に乗って一気飲みとかしてたからな…



若干後悔しつつ、でも、酒がなかったらきっとカズヤは本当に車で帰ってしまって、なんの進展もなかったような気もする。



もやもやしつつも、昼休みがくるのを待った。



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昼休み。



近くのコンビニに買い物にいった。

カズヤにもスポーツドリンクを買っていこう。



当直室は、フロアの奥の方にあり、平日の日中は誰も使うことがない。

窓はついているが、カーテンがかかっており、意図的に覗こうとしない限り、中は見えない。


私は窓の高さまで屈んで、カーテンの隙間から中を覗いた。

ソファで、ブランケットをかけた誰かが寝ているのが見える。カズヤに間違いないだろう。


廊下を見渡し、人の気配がないことを確認してから、コンビニ袋を片手に当直室をノックした。


中から返事はない。



私はそっと、鍵のないそのドアを開けた。



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