10話《騒動》
「最悪、、、。」
ぼそりと呟く。
デスクの上には、乱雑に新聞が並べられていた。
すべての新聞に大きく、
【忌子の反逆か!?】
【忌子研究施設に疑問の声】
【ずさんな管理体制?研究者1名死亡!】
と書かれている。
新聞の見出しを彩るそれは、私達にとっては吐き気を催すほど不快だった。
決して、管理体制がずさんな訳でも無かった。
しかし、元々、忌子延命施設だと一部で騒がれていた事もあってか、今回の事件がさらに火種を撒き散らしてしまったのだ。
民衆の不満は当然の反応だと思う。
しかし、ここまで出鱈目を書かれてしまってはこっちとしてもたまったものではない。
「大変っすねえ、、、。」
ふざけた後輩はあいも変わらず他人事のようにのんびりした口調で言う。
「あなたもここの一員でしょ、少しは危機感を持ったら?」
少し嫌味にそう告げると、それに気づいていないのか、はたまた気づいていたからなのか、さらに他人事のように答える。
「いや、自分はそもそもあの現場にはいなかったし、詳しい状況なにも知らないですよ。そもそも、今回の件、自分より危ないのは先輩っすよ?」
緊張感のない後輩に少しイライラしながら、後半の言っていたことは至極当然だと思った。
今回、あの問題を起こした忌子をしっかり管理するのがリーダーである私の仕事だったはず。
それなのにあのような問題を起こしてしまった。
職務怠慢もいいところだ。
今回の件で私がリーダーを降ろされても、、、いや、最悪二度と研究に関われなくなる可能性だってある。
だから、本来この件で焦るべきは後輩ではなく私であるはずなのだ。
コーヒーを飲む後輩をちらりと見やる。
自動ドアが開く。
「遥香ちゃん。」
所長だった。
彼女はいつもより、少し疲れているように見えた。
当然だ、謝罪会見を終えた後なのだから。
ここにはテレビがないから様子は見られないし、スマホも自室以外では使えないので様子はわからないが、リアルタイムで放送されていたはず。
所長だけでなく私も出るべきなのだが、なぜか出るなと言われてしまった。
「ちょっといいかな。」
手招きをされ、席を立つ。
きっと、私の処分についての話だろう。
長い息を、音を立てぬように吐いて。
私は所長について歩いた。
彼女の背は、少しだけ、ほんの少しだけ震えてみえた。
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