第38話 勿忘草の約束

「ここはあの世か?」


死んだであろう俺が目を覚ますとそこは一面青色の花畑だった。


花の名前は勿忘草、別名は藍微塵。


「なんで僕が花の名前なんて知ってるんだ。」


僕は死んだはずなのに意識があって、


僕?俺じゃなくて?


それに、見たことがないはずの花の名前を知っていて、


それを懐かしく感じて涙が止まらない。


「約束は思い出したかクソ野郎。」


視線を上げると僕がいた。


否、かつての僕がいた。


「あぁ、思い出したよ。僕。」


「力は取り戻したか。」


「お前の半分ってところかな。」


「黒幕はハッキリしたか。」


だろ。」


「あぁ、あの年増だ。」


「殺し切れてなかったんだな。」


「うん、そうだね。同じ失敗は許されないよ。」


「ヘマをしたのはお前だろ。」


「お前でもある。」


そうだ、全部思い出した。


僕は魔夜に。時針 魔夜に。


否、トバリア・マイヤーに会っている。。


綺麗な銀髪の少女に約束をした。


僕が君を守るって。


君が死ぬその時は僕が隣にいてあげるって約束した。


だから、魔眼に魂を込めた。


いつか生まれ変わることを期待して。


魔眼にありったけの魔術、魔力をストックして。


全ては彼女のために。


「覚悟が決まったようだな、僕。」


「もうは失敗しない。


世界を敵にしようとも、


何度自分を殺しても。」


「もう大丈夫そうだな。」


「悪いな、お前を作って。」


「いいって。僕は君の魔法だから。」


そう、の魔法は人外喰らいヒトデナシクライじゃない。


あれはただの魔眼の能力だ。


俺の魔法は、


残刻描写マイ・ロスト・ログ


自分の過去を持ってくる。


当たり判定は攻撃だけ。


こっちの攻撃が一方的に通る。


ただ、戦闘の先読みが必要で攻撃には使えなかった。


これまでは。


ただ今は能力がある。


俺の能力と魔法の相性はもはやチートだ。


分岐する俺、保存される残刻描写マイ・ロスト・ログ


今なら神田を殺せる。


「さっさと行ってきなよ。」


「あぁ。ありがとな。」



再び意識は現実に戻ってきて、


俺の傷は治っていた。


そんなことはどうでもよくって


「トバリア!!」


魔夜が口から血を吐いて、俺の目の前にいる。


神田にやられたんだ。


俺の傷は回復魔術じゃ間に合わなかったんだ。


だから、彼女は自身の魔法で俺の肉体を生成。


自分は死にかけなのに回復魔術で俺の肉体の修復をしてる。


じゃないと魔法が解けて俺が死ぬから。


それに全神経を注いだ結果、


本来格下である神田の攻撃をもろに受け重傷を負った。


憎い。


魔夜をこんな目に合わせた神田が。


魔夜を守るどころか苦しめている俺という存在が。


俺は今、きっとさっきまでの何倍もひどい顔をしているだろう。


魔夜はそんな俺の頬を撫で


「はい治療完了。私は死ねないから気にしないで。


それより、思い出してくれたんだ。


もう、死なないでよ。」


力尽きたのか倒れる。


彼女の体は時間が巻き戻るかのように元通りになっていく。


「やっぱり死ねないんだな。」


だから、俺はそんな魔夜の隣にいてやらなきゃいけない。


彼女は不死身で俺よりも強いけど、


俺よりもさみしがりやだから。


「神田、覚悟しろ。俺はお前を許さない。」


まずは魔夜を害するコイツをねじ伏せる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る