治安維持隊結成秘話 下

恋が軍部に入隊した後、連絡は手紙で取り合った。


今のところは怪しいところはないらしい。


恋が軍部へ行って丁度一週間がたったころ、


「はっ!?」


ワシの親族が突然、何者かに襲われ引き取りてがいない子供がいるから


ワシの方で引き取ってはくれないかという連絡があった。


孤児院が一時的に保護しているとのことですぐさま向かった。


着くと、そこにいたのは当時4歳の鏡子だった。


ワシの兄の娘の娘。


それがワシと鏡子の最初の関係性だった。


最初はまったく喋らなくて、声を出すのは夜泣きぐらい。


それでも根気強く接していくうちに、


ワシは彼女の家族になってやれた。



次にワシが出会ったのは朱兎だった。


なんとワシらの基地兼家の目の前に捨てられていたのだ。


否、おいて行かれたのだ。


一歳の赤ん坊が布にくるまれ、かごに入れられていた。


その布には片桐 朱兎と刺繍が施されており、


この子の両親も泣く泣くこうするしかなかったのだろう。


親の顔も覚えていない朱兎はワシのことをすぐに家族として受け入れた。


顔も知らない朱兎の両親に罪悪感を覚えた。


だから、ワシは朱兎を絶対に強くすると誓った。


どんな状況でも決して道を踏み外さない強さを。



最後に出会ったのは生まれて間もない赤ん坊を抱えた少女だった。


彼女の服はボロボロで、倒れているのを発見し、


家まで連れて帰った。


目を覚ました彼女曰く


「この子は憶人。藍花 憶人よ。


瓦礫の中で泣いているところを保護したの。」


食べ物も全てこの赤ん坊にあげていたらしく、


彼女が倒れたのは栄養不足と睡眠不足だった。


普通、そんな環境にいた人間は目から光が消えるのだが、


彼女からはそんなものを感じられず、それどころか


「君は何者だい?何か背筋が凍るような感覚異襲われるのだが。」


何年も前に出会った西と似た、否それ以上の何かを感じた。


そんな得体のしれない少女の答えは


「私はトバリア・・・じゃなかった。時針とばり 魔夜まや


ただの魔人よ。魔女ともいうかしら。


だけど勘違いしないで頂戴。私は危険じゃないわ。


もう争いはこりごりなの。」


ふふっと、憶人と呼ぶ赤ん坊をなでながら笑う彼女からは


後悔やら懺悔やら、きっとワシ以上に人生を歩んできたのだろうと感じさせるものだった。


ただ、その瞳には何があってもこの子を守るという覚悟があった。


「そうか、ワシは君たちを歓迎するよ。」



以上がワシの過去、今の治安維持隊の隊員との出会いのすべてだ。

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