治安維持隊結成秘話 中

少年はワシの提案を受け入れた。


どうやら金が必要だったようだ。


彼は戦争孤児のリーダーで養うために金が必要だったらしい。


「良いのか?こんな12のガキに月々10万なんて。」


「構わんよ。扶養手当ってやつだ。」


「ふーん。ありがたくもらっておくよ。」


それからワシと恋の二人で町の便利屋として


たまにテロリストやら暴力団やらを潰しながら平和に暮らしていた。


6年ほど経ち、恋が養っていた子供たちも皆独立していった。


恋には妹がいるらしく、には目覚めていないらしいが


兄妹仲は良好だろう。


「おっちゃん、そろそろ給料を下げてもらっても良いんだよ。


扶養手当って言ってたけど、その相手がみんな扶養から外れてるんだからさ。」


最初は舐められないように強がっていただけでこっちが恋の素だ。


まったく律儀な奴だ。


「わかった、扶養手当は外そう。だがな、


昇給して給料はそのまま。」


「ったく、おっちゃんは甘いなあ。


そんなおっちゃんに一つお願い。


妹も働けるようになったらここに就職させてくれないか。」


「ああ、いいぞ。恋の話を聞く限り優秀そうだからな。」


将来が楽しみだ。



それからしばらく経ったある日、それは突如起こった。


能力開花事変。


天変地異、人々の能力覚醒。


ワシらは能力がより強くなり。


能力に名前が付いた。


力を手に入れた人間が自身の欲望のままに振るうのは当然のことで


ワシもそれを責めることは出来ない。


出来ないが、家族と過ごしたこの町を壊させやしない。


ワシは誰に頼まれたわけでもなく暴徒の鎮圧を開始した。


恋とともに。



鎮圧はすぐに終わった。


能力を持とうが一般人なのだ。


今回の暴動を受け、政府は軍部なる機関をつくことにした。


その最高責任者を任されそうになったが断った。


胡散臭かったからだ。


軍部の隊員候補の中には軍人もいた。


それもワシと比べても遜色ないほどの強さの。


神田 玄人だったか。


能力は自身に制約をかけ、その分身体能力を強化するというもの。


いつか、人に対しても能力を適用できるようになれば


ワシでも危ないかもしれないな。


やはり、軍部に入り監視するべきか悩んだ。


「おっちゃん。オレ、軍部に行くよ。スパイとして。


オレはもう18だし、入隊資格はあるからさ。」


恋にはバレていたようで


「お前には愛羅がいるだろう。危険なことはさせられん。」


「大丈夫だって。危なくなったら逃げてくるから。


そしたら匿ってくれよ。」


確かに、恋の能力は殺傷力は皆無だが逃走、スパイ活動には最適だ。


「わかった。くれぐれも無茶だけはするなよ。」


「わかってるって。」


そうして恋は軍部に入った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る