第13話 袋の兎

無事侵入に成功したオレはドンドン地下に進む。


途中、関係者立ち入り禁止の標識があったが無視する。


そんなものでオレを止められるわけねえだろ。


オレは地下へと続く螺旋階段を進む。


最も、かなり下まで続くらしかったから、


手すりを足場に設定し、重力を限りなく0に近づけ壁を押し、


そのままリニアモーターカーのごとく滑り降りていく。


さらに進むといかにもな電子ロックの分厚いゲートがあった。


まさに研究所って感じの白いヤツだった。


横幅3m弱、縦幅4m弱のかなり大きな扉だ。


ただ妙だな。螺旋階段の幅もそんなになかった。


スペースと言えば、扉の前に縦横5メートルの正方形をした


(階段が終わったところをそう呼んでいいのか知らないが)踊り場があるぐらいだ。


おそらく、転移系、もしくは空間系の能力者がいるのだろうと結論付け、


扉の方に進む。


大舞踏壊ブレーキングダウンダンスホール


足裏を当て、ふちを残して扉を消失させる。


警報はならなかった。よし、上手くいっている。


そうして、研究施設に踏み込む。


「・・・チっ。悪趣味な野郎だ。」


目の前に移るのは強化ガラスで囲われた立方体と


床をひたす青色の液体、破壊されたポッド、同じ顔をした奴らの死体。


さらに強化ガラスには血が飛び散り、


中には死体が一つ放置されている。


なんとなく察しはついた。


だがな、


「これはやっちゃいけねえだろ。」


取り合えず証拠となる資料、青色の液体、この惨状の写真を撮りじっちゃんに渡そう。


きっと何とかしてくれるはずだ。


採収を終え脱出しようとしたその時だった。


「おい、泥棒。女だからって容赦しねえぞ。」


背後から野太い男の声が聞こえた。


宣誓堂々プロパガンダ


宣誓堂々プロパガンダだって!?


思わず振り返る。


強化系最強、強化倍率1000倍の神田 玄人がそこにいた。


冗談じゃない。なんでランクⅩの相手なんてしなくちゃならんのだ。


しかもオレだとバレるような行動は出来ない。


使えるのはリソースによる身体強化(倍率にして約250倍)と無重力状態の二つのみ。


分が悪い。とにかく逃げよう。


オレが捕まればみんなに迷惑がかかる。


なんでかな、こんな時に限ってみんなとの思い出が脳裏によぎる。


「死ね。」


神田 玄人が眼前に迫る。


じっちゃん、ここまでオレを育ててくれてありがとな。

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