第12話 片桐 朱兎、潜入開始

話は憶人が軍部に向かう少し前にさかのぼる。



「朱兎、頼みがある。」


「なんだぁ、じっちゃん。お使いか?」


いつも通りの受け答えだというのに嫌な予感がする。


「お前に取ってきて欲しいものがあるんだがいいか?」


「物による。」


するとじっちゃんは机の引き出しから一枚の紙を取り出していう。


「軍部、というよりは政府が非人道的な実験をしているとの連絡が入った。」


「また、あの人っすか。軍部の最強さん。」


オレはチョクチョクこういった依頼を受ける。


「それで」


「今回もその証拠資料の回収、人質(?)の救出ですか?」


「あぁ、頼んだぞ。」


そうしてオレは鏡子姉から服を受け取り、


着替えるために自室に戻る。


パジャマを脱ぎ袋をあけるとそこには


「なんじゃこりゃあー!!」


鏡子姉のお古だった。


とはいえしっかりクリーニングに出されているし、


オレように裾の長さの調整はされてはいるが、


「オレに女装の趣味はねえ。」


こんなもの着れねえよ。


抗議してやる。


そうして鏡子姉のとこに向かおうとしたら後ろから


「がバッ!」


服とスカートが襲い掛かってきた。


「ぎーやーーーー!!」


鏡子姉め絶対ゆるさん。


服を引きちぎってやろうともしたが、


「くそっ。こんなことにリソース使いやがって。」


鏡子姉の圧倒的なリソースによって強化されたこの服はびくともしない。


畜生。仕方ないので諦めて。誰にも見つからないように任務を終わらせるしかない。


オレは最高速度で空を駆け、現場へと向かう。


これなら風圧で下着見られないからな。




「到着」


ヤベー実験をしているというその施設は町中にあった。


この国の首都の人口密集地帯。


その中でもひときわ存在感を放つビル。


民間人に感づかれるリスクを冒してまで、


この立地にしたわけはなんだ?


疑問が残るがまぁいい。


実際に確かめれば良いだけだ。


「潜入開始。」


堂々と玄関から侵入し


「見学したいんですけどよろしいでしょうか。」


女声で受付に話しかける。


「ええ、どうぞ。ご自由に見学していってください。」


第一関門突破。


じっちゃんから貰った資料に書いてあった通り、


一般人向けに開放されているのでここは余裕だった。


だがしかし、オレそんなに男っぽくないのかな。


悲しいなぁ。


声に出せるわけも無くただ心の中で愚痴るのみ。


(チックショー!!)






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