第10話 最強、苦悩する。

「今のは見えなかったな。


どうやったの?」


なんともなく立ち上がって、


ホントに理解していないような感じで訊いてくる瞳。


「俺だけ能力を知ってるってのもフェアじゃない。」


「おお、太っ腹。」


おだてる瞳。だから言ってやった。


「俺も嘘を混ぜて能力を教えてやるよ。」


瞳の口角が上がる。


「へぇ、たった5,6秒のやり取りで気づけたんだぁ。


それじゃ、教えてよ君の能力を。」


っち、本当はもう知ってるくせに訊いてくる。


もっとも、俺の予想が正しければだが、


「俺の能力はバグ。だから、あんたは何も知らない。


俺は道を盛大に踏み外してるからなぁ。」


ふふっと笑う瞳。


「バグか、いい表現だ。まさしくその通りだと思うよ。


ただ、それだけで勝てるほど軍部最強は弱くない。」


俺の瞬きのタイミングに合わせて最高速度で突っ込んでくる。


本当、未来予知の相手は疲れるぜ。


仮人迫命ヒトデナシバグ


俺は拳を放って


だが、


「未来が不確定にされようが、


能力発動には意思が必要だ。


高度な能力程ね。」


読まれていた。


拳を手のひらで受け流され、そのまま肘鉄を喰らう。


顔面にもろに突き刺さり、歯を折られ、口から血を垂れ流れる。


怯むな。まだ、間に合う。能力を使え。


仮人迫命ヒトデナシバグ


次の瞬間には無傷な状態で瞳から離れた位置に立って


そんな俺に対し、瞳は余裕な風で


「う~~ん。お互い決め手に欠けるねえ。


どうしよっかなぁ。止めちゃう?」


確かにその通りなのだが、


「あいにく、今回はやめが入らないんだ。


気のすむまでやらせてくれよ。


こちとら、入隊試験も途中で止めさせられてんだからさぁ。」


「良いよ。」


かっる。ノリが軽すぎるだろ。


「君が能力を使えなくなるまで…って言おうとしたけど、


そんなことないよね?」


「あぁ、俺は能力の使用にリソースを消費しない。


消費するリソースもないけどな。」


「うぅ、今日は佑大とのデートの約束があるのに~。」


うーんと唸って悩んでる。


これでも実年齢は鏡子さんよりも上なんだよなぁ。


「よし決めた。」


考えがまとまったようだ。


「今から5分間だけ戦ってあげる。


私に一撃あたえられればあなたの勝ち。


それでどう。」


5分以内に一撃を与えろだって!?


最強相手に!?


「おもしれえ、やってやるよ。」


こうして俺史上、最長の5分間が始まる。





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