長い一夜
家を出て最初の夜。図書館の閉館時間の少し前に外に出ました。あまりにも寒かったので近くにあった屋台に入り、かけうどんをのんびりと食べました。屋台の店主のおじさんは脱サラして屋台を持った方のようで、凄く輝いてい見えた事を覚えています。
立ち止まっていると寒いので、ひたすら夜道を歩きました。深夜の夜の街はとても静かで、仄かに危険な香りがして、この世のものではないようでした。
深夜の二時頃。いよいよ疲れて眠くなってきました。僕は寝床を探しました。真っ先に思い付いたのが公園のベンチでした。穏やかに流れる川を前にして、屋根まで付いている贅沢なベンチでした。鞄をひじ掛け代わりにしてうとうとしましたが、慣れない外での生活と極寒の下では満足に眠る事も出来ませんでした。
スマホを弄って時間を潰しましたが、あっという間に充電は切れてしまいました。充電できる場所を探したところ、公衆便所の中にコンセントがある事を発見しました。そこで充電しながら僕は便器の上で眠りにつきました。便所の中は意外と快適で、多少の罪悪感を抱きながら休ませてもらいました。
とは言え、便所は便所。睡眠に適している場所では無く、熟睡には程遠かったです。二時間ほど寝て目が覚めたところで、外が明るくなってきている事に気付きました。
僕は公衆トイレを出来る限り綺麗に掃除してから外に出ました。外では学生や社会人が忙しなく動いていました。そんな人たちを前に、仄かな優越感と圧倒的な劣等感を抱きながら、当てもなく彷徨い始めました。
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