第40話


兄貴になってくれ?


かあ。


俺は、つい笑ってしまう。


はじめはへんな出逢いだと思ったけど、こういう弟がいたら楽しそうだよなあ。


そう素直に思った。


べつに春馬の兄が嫌だったわけじゃない。とは、いわないが。


おまえの弟、なんか変なやつだな?


そう言われるたびに、春馬は変じゃない!弟はふつうだ!


変じゃない、俺の大切な、大好きな弟だ!


…いつからか、言わなくなったセリフで、まわりと違うアイツが悪いんだ、に変わっていった。


あんなやつなんか知らない。


そう身勝手に距離をおいたけど、あきれるくらいに、春馬は俺に対して変わらない。


変わらないアイツの価値基準で、やっぱりアイツのなかじゃ、なんでもよくできるかっこいい兄貴って、なってるらしい。


だから、俺は笑ってしまう。


(お前は、なんにもおれに教えないくせに)


まあ、俺たち家族は、柴原が春馬の彼女って、認識していたけど。


春馬も柴原も、とくに否定してなかったよな?


肯定もしないけど。


自分たちが外からどうみられても、関係ない。どうでもいいって感じだった。


いまでも仲良すぎて、たまに神城が嫉妬してるらしいが、あんなのをふたり相手にする神城は、やっぱりすごいんだろう。


目の前にいる赤木が、春馬に嫉妬なら、


「俺はずーっと、柴原に、嫉妬してるかもなあ」


「真央は、わたさない!」


「いや、もうそもそも人妻だ。あきらめてやれ?へんなSNSとかやめろよ?っておまえに言っても無駄か」


「だから、俺じゃねーし。きちんと名誉毀損で、訴える。真央に危害をくわえるなら、容赦しない。村上と神城は、どうでもいいけど。真央がかかわるなら、べつだ」


「おまえ、執念深すぎねー?柴原は人妻だぞ?しかも、どうみても幸せだぞ?」


「だよな。それに、真央ならともかく、真央と他のヤローとの子供なんか、俺には無理だし」


「リアルに想像しなさんな!いつまでも先に進めないんだから!」


べしって赤い髪をママさんがはたいて、ベタってプリントを赤木の眼前につきつける。


「現実をみなさい、現実を。ここに嫁に来てくれる相手を探しなさい」


って例の合コンに話をもどした。


が、俺は主催者がわだし?


そういえば,森野さんはどうしたんだろ?


って思った。

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