第39話
(兄弟のくせにこうも違うのかよ?)
俺はテーブルに突っ伏し、少しあきれていた。
どうやら、初恋をひきずってるのは、俺だけじゃないらしい。
こいつもかよ?
俺の中学時代に、女子たちの人気をひとりで集めていた、村上竜生。
サッカー部のエースで真面目で、頭も良くて、見た目もいい。
チラッと神城とは、よく噂になっていたけど、あれはカップルになって欲しいって、よくわからない憧景もあっただろう。
近くにあるドラマに憧れたんだろ?
そして自分たちが選ばれなかった理由に無理矢理、嫉妬するのか、あきらめちゃうのか?
よくわからないイライラと、失望と、それでも淡い想いと、いろんなものが交差していくんだ。
きっと、俺はまだ見たことない、大都会のスクランブル交差点みたいに、たまにさ?その様子を同じ日本ってちっぽけな国なのに、行ったことない俺は、
あれだけの小さなカメラに映る画面いっぱいの高層ビルやマンションや人混みに、
きちんと一人一人の人生がある。そこの歴史が違うって言うことが信じられない。
(…これも真央の受け売りだけどな?)
たまに真央がふとつぶやくように口にしていた。
真央は田舎の老舗の和菓子店の娘だけど、あの頃には、都会に出る気でいたのかな?
俺みたいに田舎の土建屋の跡取りには、都会なんかわからないけど。
べつに親父たちが強制したわけじゃないけど、なんとなくその背に憧れて、若いくせにって言葉に関係なく、俺たち兄妹を育ててくれた。
いまの俺の歳には、もう両親は親で、真央も親で、まだまだ若いけど、田舎じゃいい女ほどはやく結婚していくし。
(くそ!こんなやつまでこっちきたら、ますます嫁取り争奪戦じゃね?)
おまえなら、その気になれば、すぐだろ?ってまわりは軽く言うけど。
(真央ほど好きになれる女がいねー)
初恋を腐れまくる俺は、もはやミイラだろう。
いや、ミイラは腐敗しないのか?
よくわからないけど。
ぐだぐだで、村上の兄貴はそんな俺ですら、なんか兄貴にみえる。
俺も長男だけど、なんか俺なんかより兄貴っぽい。
「なあ?兄貴って呼んでいい?」
って俺のせりふに、ブハッってハイボールをふきだして、
「春馬だけで手がいっぱいだ」
って断られた。
「また村上にまけるのかよ!」
って喚く俺に、
「どうしようもなくね?そこ」
ってあきれて笑う顔が、なんか村上をみる真央に似ていて、なおさらなんか嫌だった。
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